「スラム化する日本経済」は都市伝説じゃなかった | [書評]スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち


世界経済はとんでもない危機を迎えている!

はじめに断っておきますが、私は経済にはかなり疎い人間です。しかしそんな私から見ても、日本経済が窮地に立たされていることは想像ができます。景気は回復している、上向きだと盛んに言われていますが、2008年のリーマンショック以来、日本のみならず世界経済が危機を迎えている。それを包み隠さず解説しているのがこの一冊です。

2008年以降、日本でも数多くの企業が経済的な打撃を受けています。その中でも自動車産業、鉄鋼、家電業界のダメージは根深く、特にトヨタ自動車のお膝元である愛知県は雇い止めが加速している状況です。

自動車とひとくち言ってもご存知の通り自動車産業は非常に裾野が広く、ネジや小さな部品を製造するために工場がいくつも枝分かれしています。末端の工場になると廃業を余儀なくされるケースもあり、工場労働者が路頭に迷ってしまう…という結果を生み出してしまうことは想像に難くないでしょう。

働き手であると同時に消費者でもある人たちの労働状況が悪化しすることで各家庭の経済状況は厳しくなり、ますます物が売れなくなってしまう。そのため企業は経費削減のために更に雇い止めをしなければならない…まさに最悪の悪循環ができあがってしまっているのです。

日本人が経済に危機感を感じない理由とは

このようなまずい状況であるにも関わらず、日本はとても豊かな国だというイメージを持たれています。また日本に住む私たちも、よほどの事情がない限り路上生活を強いられることはないでしょうし、食べ物や着る物に困ることもありません。日本は東南アジアやインド、アフリカの発展途上国より何倍も経済力がある国だ、と自負すらしています。

実際問題、日本はピンチの真っ只中にいます。その実感があまりないのは、おそらく日本という国が海を隔てて孤立した島国だからに他ならないでしょう。

本来であれば職に就いているべき人々が、労働難民化する。そのような状況が何時までも続いていいはずは無い。地球経済は、ヒト・モノ・カネの新しい関わり方を、新しい調和の構図を発見する事が、求められているのだと考えられる。

現実、インドや東南アジア、特にタイやミャンマーなどは物凄い速度で進化しています。今後アジアで大きな成長を見せ、日本を超える経済大国になるのはインドだと言われているくらいです。インドの準公用語は英語です。そのためアメリカの大企業はインドに自社の海外支社やコールセンターを置くのが定石となっており、日本はその点で大きな遅れを取っている状況です。

日本では外国人労働者を雇って何とか経費削減をはかっていますが、仕事をとられた日本人の労働者にとっては面白くありません。外国人排斥の考えが広まり、かつてのナショナリズムに傾倒しつつあるのが現状です。

国家すらハゲタカになる日本

混沌の中にある日本経済。そこで自国の経済の手綱を握ろうとしているのが政府系ファンドです。この政府系ファンドは国が資産運用を行うための組織なのですが、彼らがいわゆる新資本主義のリーダー的役割を担っています。彼らが幅をきかせる日も遠くはありません。これはまさに、第二次大戦のヒットラー政権と全く同じ道を歩むことと同じです。

国が国民を置き去りにして暴走する、そんなことはあってはならないと強く思います。
一個人の行動でどうにかなるものではない、経済という巨大なカネの渦。これから日本を動かすのは、砂漠を飛び交うハゲタカか、それとも起死回生を起こすヒーローか。

経済という見えるようで見えない世界について、シビアな視点から切り込んだ一冊でした。


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