素数は美しい悪魔!? | [書評]素数の音楽
素数に挑戦するヒューマンドキュメンタリー
素数は、皆さんご存知の1、2、3、5..と永遠に続く数字です。この本は、素数の魅力(というか魔力)に取り憑かれた数学者、研究者たちのドキュメンタリーです。ガウス、フェルマー、オイラー、フーリエ、チューリングなどなど、数学や物理の授業で登場した有名人たちが、どのように素数に挑戦したか、それぞれの人生が物語として詳しく書かれています。
リーマン予想
本書で、ポイントとなるのは、数学の未解決超難問「リーマン予想」です。
ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンによって提唱されたこのリーマン予想は、簡単に言うと、それでも私には意味不明でしたが「ゼータ関数の非自明なゼロ点はすべて一直線上にある」です。単純には、無秩序に並んでいると思われている素数に、規則が存在するというのがリーマンの仮説です。この証明が未だに行われておらず、未解決超問題となっています。
本書では、このリーマン予想の出現の契機から、それに挑戦する人々についても書かれており、リーマン予想ってナンジャラホイというのも、詳しく理解できます。ややこしい部分でもありますが、読み流しても、物語として面白いです。
素数は音楽
この本の第四章の冒頭で次のように書かれています。
素数は音楽に分解できる、ということを数学的に表現するとリーマン予想になる。この数学の定理を詩的に述べると、素数はそのなかに音楽を持っている、ということになる。ただし、その音楽は、近代概念では捉えきれない極めてポストモダンなものである。
音楽には、親近感を抱く数学者は少なくないとも書かれています。つまり、一見ランダムに発生すると思われる不協和音の素数に、調和を持ったメロディーがあることをリーマン予想は示しているわけです。
素数とインターネット社会
素数は、インターネットで重要はファクターであることはよく知られています。この本の中でも、インターネットの暗号化方式として広く利用されているRSAについて、フェルマーが発見した素数の事実を元に作り出された成り立ちから詳しく書かれています。なので、IT技術者の皆さんも、素数と素因数分解がどれだけインターネットにとって重要か知ることができます。
しかし、リーマン予想が証明されても、素数の謎がわかるわけではないので、インターネットの暗号化は意味がなくなり、情報は筒抜けになるなんてことはないです。
最後に
この本は、先に書いたように素数という数学者、研究者を魅了し虜にしてしまう悪魔のような数字について、彼らの物語を中心に、難しい数式もちりばめながら書かれています。個人的には、ガウスの優秀さと、人工知能の父と言われるチューリングの話は非常に面白いです。