人々を助けるために戦うのが勇者 | [書評]勇者、或いは化け物と呼ばれた少女(上)
勇者とはなにか
勇者が主人公の物語の場合には、魔王や怪物を倒すための冒険活劇を思い浮かべるでしょう。
このお話はいい意味で、そんな勇者の話を裏切ってくれます。なんといっても、魔王はもう倒されています。そのなかで、生き残った勇者の少女の、魔王退治のその後を描いています。
そして、この勇者は正義感あふれる勇者に飽きている人には斬新な新しい勇者を描いてくれています。ライトノベルではありますが、しっかりとしていて読み応えたっぷりです。
勇者であるということ
人々を助けるために戦うのが勇者。
魔王が倒されていからかなりの時がたち、地下迷宮以外には魔物が存在しなくなった。
その魔物ででる地下迷宮を抱える街へ一人の少女が現れる。うすっぺらい体に、つっけんどんな態度、ちっとも強そうに見えない少女は、「勇者」であるという。
勇者であるという意外になにも持たない彼女は、魔物を殺しつくすためにギルドに入ろうと教会を訪れる。そこでひとりの同じようにギルドに入りたい少女と出会い、行動をともにするようになる。
圧倒的な強さをもつ少女。
しかし、他人にまったく関心がなく魔物を倒すことだけに心を傾ける少女は同時に、ひどく危うい存在だった。
私が勇者だから
「やっぱり、私の相手はこうなったか。
―――私とアンタは似た者同士。今となっては、なんだか懐かしい言葉ね」
人をよせつけずに、一人でも生きていけるという「勇者」。しかし、彼女は結局は人を助けている。圧倒的な強さと、人間らしい心の不安定さが人をひきつけるのだろうか。気がつけば、女ばかり4人でチームを組み討伐に向かうようになっていく。
仲間はいらない、と言いながらもなんだかんだとそばへ来た人を切ることはできない勇者。そんな彼女だからこそ、そばにいて助けよう、一緒に進もうとする仲間たち。そして、ギルドの正式なメンバーになる試験が行われる。勇者が倒すべき相手は、かつての仇敵であった。