日本国憲法をアイドルが勉強したら | [書評]憲法主義

憲法主義
著者: 内山 奈月
ISBN:4569764800 / 発売日:2015-11-05
出版社.: PHP研究所

安全保障関連法の是非の前にまずは憲法を知っておかないとね

この本は、2016年2月にAKB48を卒業した内山奈月さんが2014年高校3年の終わりに、九州大学の憲法学者である南野森さんに憲法について2日間講義を受けた時の記録です。講義の会話と内山さんのノート、レポート、宿題で構成されています。最後に日本国憲法が記載されています。2014年に講義が行われているので、安全保障関連法はまだ成立していませんが、集団的自衛権については触れられています。

改憲、護憲についてどっちが正しいかの講義ではないので、間違えないでくださいね。講義は、中立的立場から日本国憲法の意義や課題が述べられています。

私がなぜこの本を買ったかというと、安保法制が議論され、一般市民も巻き込んだ論争になっているのに、憲法自体知らないと語れないじゃん、と思い、わかりやすいのはないかと検索したらAKBのメンバーが勉強してるじゃん、これなら私でも理解出来るだろう、と思ったからです。

内山奈月さん恐るべし

内山さんは、日本武道館でのコンサートのときに憲法を暗唱したそうです。「憲法アイドル」と言われました。この本の講義の時、すでに内山さんは慶應義塾大学経済学部への入学が決まっていました。

つまり、本の内容のレベルとしては、何にも知らないビリギャルが講義を受けるものでもなく、憲法学者同士が議論を白熱させているものでもなく、相当に賢い高校生が憲法をじっくり勉強するレベルになっています。何度か、南野さんから内山さんに質問されますが、それに即答することもあるので、講義のテンポの良さと内山さんの知識に合わせた南野さんの教え方のうまさが読み取れます。

全5講に分かれており、それぞれの講の最後には、内山さんのレポートが南野さんの添削付きで載っています。忙しい人はそこだけ読んでも良いと思います。

日本国憲法について、内山さんが感じたことが第5講のレポートの最後に次のように書かれています。高校生が素直にどう感じたかという範囲で読んでみてください。

憲法の価値とは、「誰が草案を書いたのか」とか「草案の素晴らしさ」がそれを決めているものではない。その憲法が「その国に根付いているか」、「安定しているか」、「運用されてきたか」ということが、その憲法の価値を定めているのだ。そういった観点から見て、日本国憲法は素晴らしい憲法であると私は思う。

本書の講義の上手さ

生徒がAKBの高校生ということで、南野さんは講義の進め方をよりわかりやすくしているようです。例えば、「恋愛禁止は憲法違反か?」という話題が出てきます。そこから「人権とは」というところに持っていくのがうまいです。

最後に

先に書いた以外にも、この本には憲法の成り立ち、一票の格差、違憲判決例など、憲法に関係した興味を引く講義が行われています。

この本は読みやすく1日あれば十分読み切れます。
まずは、さっと1度読んでおいて、まだまだ甘いと思ったら巻末の参考文献に突入しちゃってください。

憲法主義
著者: 内山 奈月
ISBN:4569764800 / 発売日:2015-11-05
出版社.: PHP研究所

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