松下幸之助の「温かい厳しさ」が社員を惹きつけていたのかも | [書評]エピソードで読む松下幸之助

エピソードで読む松下幸之助
著者: PHP総合研究所
ISBN:4569705138 / 発売日:2009-01-16
出版社.: PHP研究所

社長としての「温かい厳しさ」が社員を惹きつける

尋常小学校を卒業し終わらないうちに大阪へ方向に出て、そこからたった三人で始めた小さな町工場。それが松下電器でした。小学校中退という学歴にも関わらず、松下氏は人の生き方とは何ぞや、経営とは何ぞやを肌で学び大成した叩き上げの人物です。

たとえば仕事で一度大きなミスを犯した社員がいても、口喧しく叱ったりはしません。「一回目の失敗は『経験』と呼ぶ。同じことを二度繰り返すことを初めて『失敗』という」だからあまり気に病むな、と励ましてくれるたと言います。

松下幸之助という人物についてはパナソニック、および松下政経塾の創設者という知識しかなく、こうしたエピソード集を読むのは初めてでしたが、まるで父親のように厳しく、そしてそれ以上に温かく社員を育てる姿勢には頭が下がる思いです。

古きよきものを忘れない「大和魂」

今も昔も、組織や仕事はイノベーションの繰り返しで成長してきました。松下氏も大胆かつ革新的な発想の持ち主ですが、その一方で古きよきものを大切にする考えも示しています。

「ものには変えていいことと、変えてはいかんことがある。南無阿弥陀仏というお念仏、あれ何百年もくり返していて、もうマンネリや言うて変えてるか」

これは個人的にも名言メモとして残しておきたいくらいいい言葉だと思います。

採算を合わせるために材料の質を落とす、今よりもっと利益を上げるために売値を底上げする、それらは経営を存続させるためには大切なことですが、そのために自分たちの仕事に対するプライドを見失ってはいけないという、松下氏のこだわりが感じられる言葉でした。

トップ「だから」ではない、トップだから「こそ」持ち得るピュアな心

ちょっと言葉は悪いですが、私がこの人物の生き様を見て感じたのが「バカ正直な人だな」ということです。

松下氏は商売が軌道に乗ると政治の面でも活躍し、松下政経塾を創設しています。お世話になっている政治家の先輩に豪華なランチをご馳走になったところ、松下氏はなかなか箸をとろうとしない。

理由を聞くと、「自分がこの贅沢な食事を食べている間も、うちのかわいい社員たちが汗水たらして働いているのかと考えると、手がつけられない」と言うのです。これに感動した先輩は、自分の今の商売をたたみ、松下電器に入社したそうです。

ちなみに余談になりますが、松下氏はかなりの早食いで有名だったそうです。本人も「太閤秀吉も早食いで有名だったんや」とお茶目な言い訳をしています。

ナポレオンなどの革命家もフルコースを数十分で食べ終わるほどの早食いだったそうなので、もしかすると早食いの人には何か偉業を成し遂げる才能があるのかもしれません。私も友人の間では「それ飲んでるよね?」と言われるくらいの早食いなので、将来は何かしらの偉業を成し遂げられたらいいかなとひ楚歌に野望を抱いています。笑。

エピソードで読む松下幸之助
著者: PHP総合研究所
ISBN:4569705138 / 発売日:2009-01-16
出版社.: PHP研究所

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