なぜ、日本だけが長期間デフレなの? | [書評]デフレの正体 経済は「人口の波」で動く
「デフレ」とは一体何なのか?
同じ著者が書いた別の著書「里山資本主義」が面白かったので、こちらも読んでみました。加えて長引く日本の「デフレ」に対して、疑問も感じていたのでタイトルにひかれたというて面もあります。
「デフレ」とは一体何なのか。物価が持続的に下落を続けることでしょうか?物が売れない、給与が下がる、消費が落ち込み経済が縮小サイクルに入る。デフレ・スパイラルに陥ることの恐怖は、この理屈だけでも理解出来ます。
デフレに関しては、「中国を始めとした新興国から安い生産品が入ってくるために、物価が押し下げられるのだ」という説が出回ったこともあります。正直、これも分かるような分からないようなでした。
このような日本の状況に対して、アベノミクスという処方箋が示されたのは周知の通りです。アベノミクスは「金融政策」「財政政策」「成長戦略」という3本の矢で、日本の経済をデフレから浮上させる政策です。ただ個人的な印象としては金融政策がメインで、金融緩和して資金を供給し続けようというリフレ政策中心だと理解しますが、現状今ひとつ感が否めません。
なぜ、日本だけが長期間デフレなのか?
「デフレ」が騒がれてから20年、デフレ・スパイラルというよりは、「インフレではないこと」に近い認識になったのは私だけではないでしょう。そして、「デフレ」の原因が従来言われてきたこと以外にもあるのではないかと感じ始めたのも。日本だけが、何故こんなにも長期に渡って「インフレではない世界」にいるのかと。
そういう意味で、「デフレの原因」を人口構成に見る意見は新鮮で説得力があります。
経済学的にどうなのかについては、賛否両論あるのでしょう。しかし日本が直面しているもう一つの問題である「少子高齢化」が、何の関係もないとは思えないのも事実です。
金融緩和を続けてもマイナス金利を実行しても、望んだ効果が得られない。企業が内部留保を積み上げるのと同程度に、労働者の給与に回してくれと言っても限度がある。ましてや子供を産めと命令するわけにもいかない。
原因が特定出来ない以上考えられる処方箋を実行していくしかないのですが、そもそも原因が一つだけとも思えず、そうであるなら藻谷説を深い考慮もなく切って捨てるのは浅はかだと思えます。
難しい経済理論も結構ですが、「こういう意見もあるのだ」と、ストンと胸に落ちてくる一冊です。