ついしん どうかついでがあったら、うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください | 本で出逢った感動の名言


本で出逢った名言・名セリフ

ついしん どうかついでがあったら、うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください

アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV) より

そのセリフに感銘を受けた理由

知的障害者の主人公は画期的な脳外科手術の人間に対する臨床実験の対象になり、短期間で驚異的な知能を持つ天才となった一方で、それまで友達だと信じていた友達から苛めらていたことなど、知りたくない事実も知ることになり、知能に感情が追い付かず苦悩します。そんな中で、主人公が世話をしていた、自分と同じ手術を受けたハツカネヅミの「アルジャーノン」に異変が起こり死んでしまいます。主人公はその亡骸を裏庭に埋めます。アルジャーノンに起きた異変は、驚異的なスピードで一時的に知能が発達した後には、退行し、元の知能よりも低くなってしまうという手術の失敗を物語るものでした。

主人公にも同じ兆候が表れ、自分自身の行く末を悟り、自らの意志で障害者施設へと向かいます。物語は主人公が手術を受けた時から書き記していた「経過報告日誌」をによって、知能の向上と退行を表現されています。この言葉は、その主人公が自分の行く末を悟り手術をした大学教授に対して、「経過報告日誌」の最後に記した言葉です。物語のラストシーンに書かれているほぼひらがなのこの一文が主人公の退行を意味し、人間らしくいられる最後に記したもので、あまりの切なさに涙が止まらなかったことを思い出します。

物語の最初の方もひらがなばかりの「経過報告日誌」だったので、読みづらくて途中で挫折しそうになりましたが、主人公の知能の向上と共に普通の文章になり、退行と共にひらがなが増えて行く…この作品はドラマや映画で何回も映像化されていますが、この文章の著わす経過の表現は小説でしか味わえないものだと確信します。

友人から薦められ、読んだこの小説ですが、別の友人に貸したところ、却って来ず、どうしても手元に置いておきたくて、もう一度購入した経緯があるお気に入りの作品です。

回答者:50代 女性


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