テニスの絶対王者の生き様を知る | [書評]ノバク・ジョコビッチ伝

ノバク・ジョコビッチ伝
著者: クリス・バウワース
ISBN:4408455954 / 発売日:2016-04-28
出版社.: 実業之日本社

世界No.1プレーヤーのこれまでの人生を知る

テニスに興味ない人のために紹介すると、ノバク・ジョコビッチは世界ランキングNo.1の王者です。2016年夏現在、最近少々調子落としてますが、それでも最高の選手であることに変わりはありません。

本書は自伝ではありません。著者がインタビューや綿密な調査によって、ジョコビッチについて書き記した本です。自伝は、「いずれジョコビッチが書くだろうと」、著者も述べています。

自伝より本書が優れているのは、多くの関係者のコメントや出来事が書かれていることです。また、関係者のコメントには何らかのバイアスがかかっている可能性があるので要注意ということを著者はあらかじめ言ってます。つまり、人は自分に都合の悪いことは言わないということです。それらに対する著者の考えも書かれていますので、信憑性が高くなっています。

本書は、1992年ジョコビッチが5歳の時から、2015年の全豪オープンまでを中心に書いています。その間のノバク・ジョコビッチの成長と苦しみが記されています。また、多くの試合の結果にも言及していますので、ボリュームたっぷりです。

セルビアという国の特異性

本書の中で、ノバク・ジョコビッチという天才テニスプレーヤーからどうしても切り離せないのが、母国セルビアです。セルビアは、元はユーゴスラビアであり、内戦を経験してバラバラになりました。その中で、ノバク少年は育ちました。本書の最後の補章は「セルビア」であり、セルビアの歴史について書かれています。

本文も、基本時系列で書かれていますので、ユーゴスラビアの紛争とノバク・ジョコビッチの成長が並列して書かれています。どのようにセルビアの歴史が、ジョコビッチに影響を与えたかがわかります。

コーチ陣

ノバク少年の最初のコーチは、エレナ・ゲンチッチで、残念ながら2013年に亡くなっています。この人無くして今のジョコビッチはいなかったです。その後、紆余曲折あり、コーチは何人か変わりましたが、現在は、あのボリス・ベッカーです。それらのコーチ陣がどのようにジョコビッチを指導したかを読むのは、テニスファンとして純粋に面白いです。

父親の存在

ずいぶん個性的な父親として書かれています。めちゃめちゃノバクを愛しており、息子の成長を邪魔するものには徹底的に反抗し、人生の全てをノバクのために尽くしています。すごいキャラクターですので、一読の価値ありです。

ただのテニス好きの少年ではない

ジョコビッチは、5歳の時にコーチとなるゲンチッチと会うシーンからすでに只者ではありません。単なるテニスがうまい少年ではないことが、セルビアという国の歴史的困難を乗り越えてきたことからもわかります。

ジョコビッチがトップランクまで上がってくると、フェデラーやナダルとバチバチ火花が飛びます。結構プロテニスプレーヤーって、感情荒いんですよね。ジョコはまだおとなしい方ですが。

日本向けには

まず、ユニクロがスポンサーになった話が少しだけ出てきます。あと、2014年全米オープン準決勝で錦織圭が、ジョコビッチに勝った試合の話も、ちょっとだけ出てきます。錦織圭の名前が出てくるのがこの一か所だけなのが、寂しいところです。また、その内容も錦織圭ファンにはちょっと寂しいかも。

ノバク・ジョコビッチ伝
著者: クリス・バウワース
ISBN:4408455954 / 発売日:2016-04-28
出版社.: 実業之日本社

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