江戸川乱歩作品のうんちくが満載なのが嬉しい | [書評]ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~
著者: 三上 延
ISBN:4048914278 / 発売日:2013-02-22
出版社.: アスキー・メディアワークス

ベストセラーシリーズの初めての長編版

このシリーズは、2016年7月現在で6作出版されています。2012年に1作目が本屋大賞にノミネートされています。累計600万部を超えるヒットシリーズなので、読んだ方も多いと思います。私は、1,2,3作は数年前に読みましたが、久しぶりに4作目を読みました。1,2,3作は、短編集ですが、4作目は長編です。長編と言っても、文庫本300ページ程度ですので、一気読みの範囲です。

今回のテーマは、”江戸川乱歩”

テーマは、”江戸川乱歩”です。最終目的は、膨大な乱歩コレクションを持つ人物が残した金庫を開け、その中身が何であるかを知ることです。金庫を開けるには、鍵とパスワードが必要で、それを主人公の栞子さんと語り手である大輔くんが見つけ出そうとするわけです。そこに、栞子さんと母親の微妙な関係、東日本大震災を絡めながらストーリーが展開します。

古書のうんちくがてんこ盛り

ビブリア古書堂シリーズは、古書のうんちくがてんこ盛りなわけですが、今回は江戸川乱歩について、多くの興味深い逸話や作品の解説が栞子さんと母親により語られます。そして、なんといっても「少年探偵団」シリーズについても当然触れられていて、普通の人は知らない、マニアックな話が書かれているわけです。

正直なところ、漱石や太宰の作品などについて書かれた、以前の1,2,3作については、「はあ、そうですか」程度に読み、ストーリーをメインで読んでいました。しかし、今回は、小学生時代におそらく皆さんも、もちろん私もはまった少年探偵団シリーズと作者の江戸川乱歩についての逸話や作品の概要などが詰まった、乱歩解説本とも言ってもおかしくない作品になっていますので、一気読みでした。作品中に”BDバッジ”が登場しますが、めちゃ懐かしいです。

もちろんメインの金庫開けの謎解きや、予想外の展開は、従来のシリーズ同様に面白く読むことができます。

作者の気配りが優しい

ビブリア古書堂シリーズファンの方はもう既に本作は読んでおられるでしょう。そこで、読んでない方のうち、オススメなのは、やはり江戸川乱歩ファンです。

本作の中で、乱歩の作品の「二銭銅貨」について、栞子さんが大輔くんに

…。
作中のトリックに触れてしまいますけれど、話しても構いませんか?

というセリフがあります。これは、大輔くんに言っている形をとって、読者に伺いを立てているんですね。作者の気配りが伺われます。

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~
著者: 三上 延
ISBN:4048914278 / 発売日:2013-02-22
出版社.: アスキー・メディアワークス

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