SFの巨匠が贈る幸福な未来を求める主人公の人生探求挑戦物語 | [書評]夏への扉[新訳版]
SFですが、青春小説とも言えます
著者は、SF界では有名なロバート・A・ハイラインです。「宇宙の戦士」などを書かれています。ハイラインの作品の中でも本書は評価が高いようだったので、読んでみました。
単純には1970年と2000年が舞台のタイムトラベル小説です。普通タイムトラベルの話になると、ややこしいパラドックスが登場しますが、そこら辺は本書では軽く書かれてますので、あまり気にせず読めます。
本書のテーマは、私なりにいうと自分の幸福の探求です。作中では、冒頭に主人公が飼っている猫のピートの行動を通してそれを伝えています。
人間様のドアの少なくともひとつは、夏の世界に通じているとピートは信じて疑わなかった。
ピートにとって夏は幸福な世界なわけです。夏の扉の先は、ピートが求めているように、主人公が求める世界でもあります。その夏の扉をなんとか開けようとする主人公の挑戦が本書のテーマです。
主人公の境遇の変化がすごい
主人公のダニエルは発明家・エンジニアです。スティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアック(どちらもAppleの共同創立者)を一人にしたような人です。一人で考えて、一人で作ってしまうタイプです。
ネタバレしないように注意しながら書くと、ダニエルは最初成功しますが、トラブってから、2000年にコールドスリープします。本来ダニエルが希望していたようにはならなかったため、ダニエルはなんとか正しい2000年(つまり夏の扉)を求めようと色々苦労します。
原作は1956年に発表されているので、だいぶ現実とずれてます
未来を描くのはすごく難しいもので、本書の舞台であった1970年と2000年は、小説の中では結構進んだ世界ですけど、現実はそこまで未来化していません。宇宙開発も2000年には進んでいることになってますが、現実は全然そこまで行っていません。しかし、話自体には全く影響ないことですので、そんなことは気にせず読めます。
主人公が求める夏の扉の開け方がポイント
ダニエルは、夏の扉を求めて、多くの苦労をします。努力が半端ないです。一発勝負も掛けます。最終的にどうなるのかは、ぜひ本書を読んでみて欲しいです。