切ない恋とはまた違う物語 | [書評]君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい
著者: 住野 よる
ISBN:4575239054 / 発売日:2015-06-17
出版社.: 双葉社

感情移入が強くできる

膵臓を患い、短い寿命が決まってしまった女の子とそれをたまたま知ってしまった男の子物語です。

残り少ない時間の中でできるだけの日常を送りながら、やり残したことを男の子を巻き込んでやっていきます。なぜか近寄ってくる女子と人間関係を拒む男子。

書き方が程よく日常的なので感情移入がしやすいです。一緒に青春を感じるような不思議な感覚に陥ります。旅行に行ったりケーキバイキングに行ったりと、一緒に楽しんでいる感覚になってきます。若干他のクラスメイトとの関係性などの苦いエピソードや関係性の変化の描写などもまた青春を思いだすようなステキな構成になっています。嫉妬から来る剥き出しな感情の描き方が人間味溢れていて、手に汗握る展開です。

一つ一つの言い回しが小気味いい

君の膵臓をたべたい

序章に出てくる物語の題名にもなっている大きなカギになる言葉ですが、どうしてそんな言い回しになったのかの理由が良いです。二人の関係性を表しているし、男の子の変化を存分に捉えた言葉だと感じます。その意味が分かった時、すごく胸が締め付けられる感じがありました。

全体的に主人公たちの会話は常に程よくクサく程よく青春性が含まれていて、またキャラそれぞれの持ち味や個性に溢れています。文学的過ぎず俗っぽすぎずとても小気味の良い会話ですんなり入りこむことができます。

衝撃の結末

結末が衝撃的でした。詳しくはご説明できませんが、作者の言いたいことは生と死は誰にでも平等と言うところでしょうか。物語と並行して進んでいたもの事や大きな伏線小さな伏線の回収の仕方が面白く、斬新な流れだと感じます。物語途中では疑問でしかない違和感が最終的にすべて納得できるように構成されているので、読み切った際はある種の満足感を得ることができます。

また、主人公たちに感情移入をしていれば、少し涙腺がゆるくなる可能性があります。特に主人公の心の成長が気づけるところがこの作品の一番の読みどころだと感じます。

君の膵臓をたべたい
著者: 住野 よる
ISBN:4575239054 / 発売日:2015-06-17
出版社.: 双葉社

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