人間の醜い部分や純粋な部分、奇妙な部分を宝石に例えてみる | [書評]サファイア

サファイア
著者: 湊かなえ
ISBN:4758438951 / 発売日:2015-05-15
出版社.: 角川春樹事務所

宝石にまつわる物語の短編集

湊かなえ氏の独特なミステリーの短編集です。それぞれ宝石の名前が短編の題名になっていて、ミステリーの大きな意味を持つように散りばめられています。特に人間の醜い部分や純粋な部分、奇妙な部分を宝石に例えたり象徴したりするところが面白く感じました。

一つ一つの物語が独立していて、進み方も全く違う。だからこそ最後まで飽きずに読み切ることができると思います。冒頭の真珠に関しては謎が解ける瞬間、衝撃ではない何か少し人間の恐ろしい部分を感じるなど一編一編が作りこんであり、読み応えがあります。

視点変更による不思議な読み心地

なんと高慢な女子中学生なのだろう

「ムーンストーン」に出てくる小百合の想いです。その高慢な考えによって得られた友情が自分を結果的に助けてくれるという皮肉の混じった短編。ミステリーながら、捕まるところから始まるのもまた面白く、物語のゴールが見えないまま進んでいくという、物語そのものが謎だったりするものも含まれています。

特に面白いのは、物語の途中で出る不穏な文。明らかにあとから回収するである伏線なのですが、それが読者である自分を不安に、好奇心に駆らせられます。主に後味が悪い終わり方ばかりですが、それが癖になるある特殊な短編集です。登場人物一人一人が闇というか人間の嫌なところを持っていて、それを物語を進める上で主幹として取り扱っています。作者の作風が存分に発揮されているのはこのあたりではないかなと感じました。

ガーネットとサファイアの関係

最後の二編はつながっていますが、なかなか衝撃的なラストでした。この本を終わらせるのに違和感なく。特にガーネットの最初はあとがきとかそんな印象を持つ書き出しだったので、より興味深く入りこむことができます。

後味が悪いものの、ぎりぎり理解できるというか、報われる人がいるというか、そんな書き方なので自分の本性にも触れることができうる不思議な小説でした。

サファイア
著者: 湊かなえ
ISBN:4758438951 / 発売日:2015-05-15
出版社.: 角川春樹事務所

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