フィンテックを実践する前にまず押さえておきたい本 | [書評]決済インフラ入門

決済インフラ入門
著者: 宿輪 純一
ISBN:4492681418 / 発売日:2015-12-11
出版社.: 東洋経済新報社

決済インフラとは

「決済インフラ」とは、著者が定義した用語で、第1章に次のように示しています。

金融機関間の決済を集中処理する「決済システム」に加え、決済システムに入るまでにも様々な決済の段階とそのインフラがある。本書ではそれらを全部まとめて「決済インフラ」と名付け、その全般を解説し、俯瞰したい。

本書の著者は大学経済学部教授であることもあり、文章はすこし堅めです。
お気楽に読める本ではありませんが、「決済」について、多種多様なシステム、仕組みが網羅されておりながら、基本的知識として知っておくべきことに集約して書かれていて、難しい本にはなっていませんのでご安心を。

決済インフラは、気がつくといっぱいある

大きくは、以下に分かれています。

・現金系決済(電子マネーや仮想通貨など)
・口座振替決済(クレジットカード、SNSなど)
・銀行間決済(全銀システムなど)
・海外系決済(米国、中国など独自のものやSWIFTなど)
・証券系決済(国債や株式など)

LINEもモバイル決済やっているんですよね。
システムエンジニアの方で勘定系金融システムに関わっておられるならば、さらに興味を持たれると思います。自分が作っているシステムの全体像や他のシステムがどのようなインフラや機関で構成されているかを知ることができます。

今決済インフラを知っておいた方が良い理由

一言で言えば、「フィンテック」がブームだからです。フィンテックがらみで企業の株価がストップ高になったりしています。著者はフィンテックを以下のように説明しています。

金融とテクノロジーの合成語で、単にITの活用を進めるだけではなく、AI、スマートフォン、ビッグデータなどを駆使した新金融サービス

フィンテック自体は、PayPalのような企業が以前から実施していましたが、ここに来て人工知能やビッグデータの技術革新により、注目を集めています。IT技術者としては、押さえておいた方が良いと思います。

ビットコインと決済サービスリスク

本書では、決済インフラに関するリスクも、実例を含めて記載されています。その一つが、日本から世界に影響をおよぼした仮想通貨ビットコインの取引所マウントゴックスの破綻です。ビットコインへの信頼性を揺るがす事態になりました。著者は、この事件を法的リスクとして捉えています。

最後に

本書は、多くの決済システム、方式の基礎を網羅しています。また、実例を含めたリスクも書かれています。私が、多くの類似本から、この本を購入したのは、フィンテックやビットコインのみに特化して書かれた本ではなく、クレジットカードや海外送金の時に使ったPayPal、SWIFT方式など、多くの決済について理解ができるからです。

なので、まずはこの本を読んでおいて、決済というものを俯瞰できるようになっておいて、その上で自分が興味あるエリア、例えばビットコインなどの専門書を読むと良いと思います。その方が「木を見て森を見ず」ということにならないです。

決済インフラ入門
著者: 宿輪 純一
ISBN:4492681418 / 発売日:2015-12-11
出版社.: 東洋経済新報社

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