学生を就職させればそれでOK?大学教育の実態とは | [書評]若者はなぜ「就職」できなくなったのか?


正社員枠を限界まで減らして、経費節減をはかる企業たち

現在深刻な社会問題となっている「フリーター・ニート」問題。大学卒業率50%を超える日本の若者が、どうして就職できないのか?

まずは企業が考える極端な「正社員減らし」から抜粋です。

”若者は、就職をしたいのであれば、会社から雇用されるだけの能力を備えているべきだ。それに値する「いい人材」でなければ、企業の側は、無理をしてまで新規学卒者を採用するつもりはない”

――多少の単純化と誇張を含んではいますが、企業の側の本音は、こう表現できるのではないでしょうか。

大卒の若者はゴロゴロいるのに、正社員になれず仕方なくフリーターの道を選ぶ…そんな新卒が増えているのが大きな現状です。

ちなみにお国が大学に口を酸っぱくして言っているのが、「就労基礎能力」を持った人材を育てること。就労基礎能力とは、コミュニケーション能力、職業人意識、基礎学力、ビジネスマナー、資格取得。つまり、ビジネスの即戦力となる人材を作りなさいよ、という事ですね。

「職業人養成所」と化した大学

私は短大卒なので、大学生活は「4年間も通うのって長そうだけど、自分の好きな事に長いスパンで取り組めるんだから楽しそうじゃないか」というイメージをなんとなく持っていました。

しかし実際、大学は早いところだと一年生からすでに就職を意識し、一般教育を圧迫するほどの「就職カリキュラム」が組まれているようです。先述した「就労基礎能力」をつけさせるためにとにかく必死なのです。大学生は研究室にこもってひたすら専門分野の習熟に没頭する…というイメージが霧消した瞬間でした。

確かに大学は就職へ向けた最後のステップといえる場所です。が、たった数年の急ごしらえで、実際に職場で通用する社会人スキルは身につくのでしょうか?大学だからこそできる自分なりの専門分野を磨く考えは、もう一昔前のものになっているのでしょうか?

果たして正社員になることが全てなのか?

私としては、無理に正社員にならなくても、そんなに困らないんじゃないかというのが本音です。たとえばフリーターでも厚生年金に加入できるシステムはありますし、得意分野を活かして正社員並みもしくはそれ以上の収入を得ている人もいます。さらに、いわゆるノマドという人たちも増えました。個人の能力を活かして、20代で起業する人もザラな時代です。

大学に行って、就職して、定年まで勤めあげる…とても立派なことです。しかしライフスタイルが多様化している今、人生の選択肢は正社員になるだけではないことを、今の若者はもっと意識してもよいのではないかと思います。


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