ファンタジー雑学辞典。ゲーム開発者にも面白い! | [書評]ゲームシナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束110


ゲーマーが読んでも十分面白い

ファンタジーゲームをやったことのある人であれば、例えばドラクエとかですが、ある程度「ファンタジーの世界はこんなもの」という認識があると思います。しかし、ファンタジーゲームを作ろうと思っている人となると、「そのぐらいの知識ではダメ」ということをこの本は教えてくれます。そう、実はファンタジーは奥が深いのです。

しかし、ファンタジーゲームクリエイターでは、一般のゲーマーが読んでも十分面白い内容ですし、ファンタジーに対する理解がより深まると思います。なので、読み物としても楽しめます。「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリーポッター」の話もちょいちょい挟みながら、作者は読者を飽きさせないようにしてくれています。

イギリスの爵位を知っていますか?

ファンタジーゲームのシナリオを作成する上で、リアリティを持たせるには、タイトルにあるように、歴史、文化、お約束を知ることが必要です。本書は、全7章で構成されています。

第1章 国家
第2章 魔法
第3章 武器
第4章 宗教
第5章 世界
第6章 魔物
第7章 生活

歴史好きには、「第1章 国家」がオススメです。ローマ帝国やら中世ヨーロッパ、はたまた封建制の話まで書かれています。細かい心遣いが嬉しいのは、ゲーム中では、日本語より英語の方が一般的な単語については、英語を表記してくれています。例えば、「領主(Load)」です。そりゃ調べればわかりますが、読み物としてスラスラ読めます。ドイツの話の場合には、ドイツ語が併記されているのが念の入ったところです。

イギリスの中世ヨーロッパの爵位を知っていますか?この本の中では、大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士の順に書かれています。私は、子爵と男爵の順位を間違えていました。

個人的に、辞典として嬉しいのは、「第3章 武器」です。武器の種類はもとより、それぞれの武器について、名前、英語名、長さ、重さ、サンプルの絵と解説が書かれています。例えば、剣の最初に出てくる「グラディウス」は

グラディウス(Gladius)
長さ:60から70 cm 重さ:1kg

ローマ帝国時代のローマの軍団兵の剣。盾の隙間から突き出して、敵を突く為に使われる。鍔が小さく、盾の脇から突き出しても、引っかからないように作られている。

どうです、詳しいでしょう。長さや重さは、キャラクターの戦闘能力によって持てる・持てないとか両刀にできるとかに関係するので助かります。

あと意外と重要なのが、「第7章 生活」です。仕事にどのようなものがあったか、中世ヨーロッパには用途も大きさもまったく違う二つの道があるとか。最後近くにある「名前と国」では、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語で、一般的な名前の一覧を載せています。

例えば、有名どころでいうと、英語の「ピーター」は、

フランス語:ピエール
ドイツ語:ペーター
スペイン語:ペドロ
イタリア語:ピエトロ

です。キャラクターの名前に言語ごっちゃで名前をつけてしまうと結構恥ずかしいでしょう。

近世ヨーロッパは不潔だった!?

ちょいちょい、この本の中にはコラムがあります。それも一風変わっていて面白いです。第5章の最後には、古代・中世ヨーロッパの銭湯(テルマエですね)の話が書かれていますが、その次の第6章の最後には、近世ヨーロッパは不潔だった話が書かれています。

惜しいのは、「第2章 魔法」で、「第3章 武器」にあったような、魔法の一覧が無いことです。魔法の原理は書かれてるんですけどね。


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