日本の古典文学を身近に感じさせる”古文の読解” | [書評]古文の読解

古文の読解
著者: 小西 甚一
ISBN:4480092730 / 発売日:2010-02-09
出版社.: 筑摩書房

学生時代の丸暗記になっていた古典常識が変わる

本書は、学生時代古典の科目を世界観や、文化の面でよくわからない、という理由で敬遠していた方にとてもおすすめできる一冊である。本書では、半数近い項を古典文学の文化歴史はもちろんのこと、当時のものの感じかたについて割いている。学生時代に古典という科目がいまいちつかめない、という方はおそらく、この”ものの感じ方”というものが曲者で現在との差について行けなかったからではないだろうか。

学生時代に文学史や文化などを暗記した方も多いだろうが、はっきりいって苦痛ではなかっただろうか。本書はそのような苦痛に解決法を与えてくれる。この文章をお読みになっている方の中には古文単語を覚えるのが、用例が多すぎるから苦痛だったという方がいるかもしれない。

そんな方に著者小西甚一は次のように述べている。

用言ぐるみ覚えておけば、いちいちの訳語は忘れても、なんとか解釈できるはずである。

多数の用法を持つ言葉であったとしても、その語の根幹となる意味さえ覚えておけば、あとは場面にしたがって柔軟に訳を作れるだろう、というのである。このように本書には古典アレルギーを解消するポイントが随所に散りばめられている。

それでも古典に抵抗があるという方へ

「古典の読解」というタイトルから伺えるように、高校生向けの参考書の体をとっているものの、先に述べたように、古典の”空気”に始まり、どのようにして古典を咀嚼し、感じるか、ということが書かれており、受験での古典なぞすでに忘れてしまった、という人にも十分読める内容である。

読むための文法についてもふんだんに説明がなされており(こちらも当然のことながら丸暗記ではなく、理屈の上での説明がなされている)、古典を読む上でのバイブルとしても活用しうる。本書を一冊読み通したあと、読者の古典アレルギーは払拭されていることだろう。本書をきっかけに古典文学を読み漁ろうとしても、さほど苦難な部分というのはないように思える。

古文の読解
著者: 小西 甚一
ISBN:4480092730 / 発売日:2010-02-09
出版社.: 筑摩書房

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