人生最期にしたい1つのことは? | [書評]世界から猫が消えたなら

世界から猫が消えたなら
著者: 川村 元気
ISBN:4838725027 / 発売日:2012-10-25
出版社.: マガジンハウス

本屋大賞ノミネート・100万部突破・映画化

天邪鬼なタイプであると凄く売れている、映画化される本は逆に手に取る気が起きない。そんな傾向はありませんか?きっと私だけではないですよね。

中学生の娘がお気に入りのこの小説は、まさにそのタイプの王道。加えて昨今のネコブームに上手く乗っている感じすらします。oh・・・。
普段なら絶対読まないけれど、娘との共通の会話が激減していることもあり読んでみることにしたのです。

主人公は30歳の郵便配達員。余命いくばくもないと宣告された主人公の前に突如現れた悪魔からの提案は「1日分の命と引き換えにこの世界から1つ何かを消す」こと。こうして電話・映画・時計と1つずつ消していきながら、自然と自分の人生を振り返っていきます。

まず非常に読みやすく1時間程度で読めてしまえるので、日頃本を読まない・読書が苦手な人には小説を読む入口として良さそうです。

ツボを押さえた読みやすい文体は作者が作家でなく、「告白」「モテキ」等ヒット作を多く手掛ける映画プロデューサーであることも多いに関係しているのでしょう。

読者一人一人がIfを考えたなら

ただ小説としては物足りない点も多々あります。
例えば「映画」を消してしまうことについて。
主人公の元彼女と唯一出てくる親友の2人ともが映画に深く魅せられた人生を送っています。そんな大切な人達の大切なものを消しているのに、その後の世界の変化に関する記述が無い。主題が別にあるとは言え、Ifに興味を持って本書を手に取った人は物足りなさを感じるでしょう。

しかしコミック版では映画館は本屋に、映画好きの2人は本好きに変化しているようです。映画版でもその辺のディティールは描き込まれていくのかもしれません。
私自身も本書を読みながら頭の中でいくつもの想像をしたように、本書を読む人によって、その人なりの補完が違ってきそうな気がします。
理系の人であれば時計が消えた世界をどう想像するのだろう。いくつものIfを色々な人に聞いてみたい衝動にかられる、そんな会話のきっかけになる楽しみを持っているのも、多くの人に支持される理由な気がしました。

人間は自分が知りえない、自分の姿、自分の未来、そして自分の死を知るために猫と一緒にいるのではないか。猫が人間を必要ろしているのではない。人間が猫を必要としているのだ

作中には猫も重要なキャラクターとして登場します。この猫の扱いを映画でどう演出するのか、猫好きとしてはちょっと期待してしまうところです。

世界から猫が消えたなら
著者: 川村 元気
ISBN:4838725027 / 発売日:2012-10-25
出版社.: マガジンハウス

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