神様の悩みをのぞいてみよう | [書評]神様の御用人

神様の御用人
著者: 浅葉なつ
ISBN:4048662708 / 発売日:2013-12-25
出版社.: アスキー・メディアワークス

主人公は、神さまの「御用人」

京都に住む1人のフリーター良彦が「御用人」となり、狐神と一緒にたくさんの日本古来の神様たちの手助けをしていく物語です。

人々はたくさんの願いを抱えていて、その願いを神社で神様にぶつける人も多い現代。しかし神様は、人々の感謝の心や畏怖の心で力を蓄える存在。願い事をぶつけることが多くなってしまった現代において、神様の力は衰えていました。

そんな力を削られた神様が困ったときに手助けをする…それが「御用人」です。良彦は意図せず「御用人」に任ぜられ、日本各地のなんとも人間くさい神様たちの手助けをしながら自分を見つめなおしてもいきます。

登場する神社は実在のものばかり

「神様」というと、『古事記』や『日本書紀』に書かれているあの神様ですが、読んだことのない人も多いと思います。神様とは、絶対的な存在でなんでも意のままにできる…というイメージがあるかもしれません。

だが古い書物を紐解けば、神といえど夫の浮気に怒り、妻が身籠った子を本当に我が子かと疑い、兄たちの罠にあっさりハマり、姉の家で大暴れし、ついには糞をまきちらしたというような逸話が数多く残る。

しかし、このように、この本に登場する神様はとても人間くさくて、夫婦関係や親子関係に悩んだり、人の力になれているかと思い悩んだりします。敬語を使わない良彦に対して偉ぶるわけでもなく、御用人の力を借りながらどうにかして自分のこの悩みを解決したいと思っています。そんな風に描かれる神様だからこそ、とても馴染みやすく寄り添いやすく感じられるのかもしれません。

実は『古事記』などにもそのような人間くさい神様が描かれていますが、『古事記』や『日本書紀』を読んだことのない人でももちろん読みやすくなっています。むしろ、この本を読むと『古事記』を読みたくなるかもしれません。

登場する神社も実在のものばかりで関西が中心になっています。関西の人にとっては、とても馴染み深い場所がたくさん登場するので、より楽しめるかもしれません。

面白いだけでなく、日本古来の風習や神話も学べる

神社や神様が好きだという人にはもちろんおすすめです。

日本がどのように作られたと考えられているのか、どう伝えられているのかも知るきっかけにもなると思います。また、今流行りの御朱印巡りをする人にも楽しんでもらえるのではないでしょうか。御朱印だけでなく、そこに祀られている神様をより身近に感じられるようになるかも…。

読めば神社巡りや観光の手助けにもなるかもしれません。
関西在住の私は、『神様の御用人』を読んで、「こんな神社もあるんだ!」「こんなお祭りがあるんだ!」と、登場する場所や神社に行ってみたくなり、いくつかには実際に行ってみたりもしました。

日本の習慣や土地に関することにも触れられていて、それでいて堅苦しくないので楽しく気軽に「日本」を知ることができる…と、堅苦しいことを書いているかもしれませんが、単純に御用人良彦と相棒のモフモフ狐神のかけあいも楽しめます。コミカルな面あり、まじめな面あり、感動あり…。

ぜひ、この人間くさい神様たちの悩みをのぞいてみてください。

神様の御用人
著者: 浅葉なつ
ISBN:4048662708 / 発売日:2013-12-25
出版社.: アスキー・メディアワークス

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