生きたメンタルトレーニングを学べる一冊 | [書評]大道典嘉勝負を決めるメンタル力―名手に学ぶプロフェッショナル野球論


どんな分野にも生かせるメンタルコントロールの方法

大道典嘉は、巨人で代打としての長年活躍し、メジャーリーグでコーチとしての研鑽を積んだ経験を持つ選手だ。

この本が野球を志す人にとって役立つものであることは勿論、むしろそうでない分野にとっては生きたメンタルトレーニングを学ぶことのできる貴重な一冊と言って良いだろう。

“一流はいかなるときもスキを見せない”“一流は誘いを断り、自分のルーティンにのみ忠実”など、様々な仕事に応用できるメンタルについてのトピックが具体的に分かりやすく説明されている。一流とよばれる人たちに共通する特徴や、習慣にしていること、また逆に二流の人たちはどうして二流なのかなど、実体験を元に分析されているのでとても説得力がある。

アメリカにおけるメンタルコントロールのスタンダードとは

日本では通常調子が悪い、成績が悪いといったマイナスな成果に傾くと、もっと頑張らなくては、気合いを入れようなどという考えに向くことが多いが、著者によるとアメリカでは “調子がわるいときに、やすませる” が常識だ。

これは調子が悪い時にこそ、思考に余裕をもたせてメンタルを整理でき、仕事のクオリティを上げられるという考えで、さらには普段のトレーニングも“エンジョイする”ことで、単なるつまらないノルマ作業としてでなく、ポジティブな気持ちでコンディションを上げることができるのである。

大道は現役選手として23年間活躍したが、これは野球の世界では相当長い期間である。歳を重ねてからも現役として活躍するために様々な苦労があったことは言うまでもないが、そういった中での試行錯誤の経験がその後の若い選手を育てるための貴重な糧となり、また様々な分野で共通するメンタルトレーニングというテーマについての研究は多くの人のメンタルについての悩みを解決する糸口になるだろう。

実際の経験をもとに書かれた生きたメンタルトレーニング本という意味では小難しい専門書よりもよっぽど実用的でためになる一冊と言えるだろう。


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