あるとすごく助かるゲームシナリオ作成手引きです | [書評]ゲームシナリオの書き方 基礎から学ぶキャラクター・構成・テキストの秘訣


この本の読者対象者は誰?

シナリオに従ったゲームを作成したいと思っている人です。なので、シナリオの無いゲーム(アクションゲームとか)は、対象外です。シナリオのあるゲームと言えば、ドラクエのようなRPGものや、アドベンチャーゲームです。

この本は、教科書ではありません。冒頭の「はじめに」で作者が述べています。

本書にかかわらずシナリオの入門書を読めばシナリオが書けるようになると思い込むことは危険です。本書に書いてあるシナリオの作り方は、あくまで一例です。

あなただけの「シナリオの書き方」を会得すること、それが重要です。

この本は、シナリオ作りで最低限知っておいた方が良いことを教えてくれます。しかし、そのまま使うのではなく、咀嚼して、「自分はこうする」とか、「こんなことも必要だ」というように、自分のシナリオ作成理念を生み出すことが目標と言えそうです。

ゲームシナリオって作るの難しいの?

シナリオを作るのはそれほど難しくないのでしょうが、良いシナリオを作るのは難しいです。良いシナリオとは、自分の思いだけにとらわれずに、ゲーマーであるりユーザーがハマってくれそうなシナリオという意味です。

以前、私はケータイアプリの女性向け恋愛ゲームを開発している会社で働いたことがあります。ユーザーさんの声を聞いてみると、はまっている人が思った以上に多かったです。また、そのゲームの担当者は、シナリオライターさんの書くシナリオに対して、結構厳しく検査していました。

この本の内容

この本には、ゲームシナリオを作成するための多くのノウハウが書かれています。序章部分は、シナリオ担当となった新人君と指導役の先輩の面白い会話形式で、シナリオ制作の流れと考え方、用語がわかるようになっています。こういうとき、新人は男性、指導役は女性というのはお決まりなんですかね?男性に共通の、女性に教えられたい願望?

序章を除くと、本文は3部構成になっていて、次のようなことが書かれています。

・第1部:テーマ、ストーリー、キャラクター、世界などのゲームの主成分とされるものについて
・第2部:シナリオの構成要素、選択肢など
・第3部:テキスト(ゲームシナリオを構成している文章の意味だそうです)

絵、図、実際のゲーム画面が利用されており、また文章も端的で読みやすい本になっています。実際の映画やゲーム、実在の人物も例として登場します。さらに、必要なところで「Point」が示されており、理解しやすくしてくれています。

例えば、「テーマとは」については、以下のような形で説明されています。

ゲームに一定のイメージや方向性を導き出す言葉や文章。

ドラマなどのシナリオとゲームシナリオの大きな違いは、第2部の第8章に描かれているインタラクティブです。インタラクティブには選択肢が必要となります。ここでは、選択肢の重要性と限界について書かれており重要な章だと思いました。

選択肢にも絡みますが、ゲーム進行を管理するための「フラグ管理」も重要です。フラグ管理表についても書かれています。実装するときに意識するところです。

第3部テキストでは、多くのページを「セリフ」に割いています。いいセリフを書くのは、そう簡単ではないと作者も言っています。しかし、少なくとも知っておくべき知識が示されていますので、「このキャラは絶対こんなこと言わね」なんてことにはならないように助けてくれています。

最後に

すでにゲーム会社に勤務されている方でしたら、この本を読む必要は無いかもしれません。実務で、自然と習得されるかも(OJTですね)。しかし、この本に教えられることも多いと思いますし、またゲーム開発の経験の無いプログラマーが自分でゲームを作ってみたいと思った時には、この本は非常に参考になります。現在私は、ゲームシナリオを執筆中です。

この本に描かれていることを大いに参考にしていますが、冒頭にも著者が書いているように、この本の真似ではない、自分のシナリオの書き方になるよう注意しています。


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