【書評】宗教とは一体なんなのか?と、根本的に考えさせてくれる「反キリスト」本 | キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』


私は、特に信心深い人間ではありません。かといって、キリスト教を否定しているわけでもありません。ただ、世界にはいくつもの宗教があり、どれも基本的には人間が生きるための正しい道を説いているにもかかわらず、どうしてこの世に憎しみや戦争が絶えないのか。その疑問がつねに頭にあり、書店でこの本を手にとりました。

ニーチェといえば「反キリスト教」というイメージが強いですから、クリスチャンの方から見ればとんでもない異論(極論)だとは思います。しかし「現代語訳」というだけあって、宗教に疎い自分にも非常にわかりやすく書かれているというのが第一の印象です。「キリスト教は有罪」とまで言い切るニーチェに完全同意するというよりも、「宗教とは何か」という根本的な問題まで考えさせられます。

また、キリスト教が「罪」と闘うのに対し、仏教は「苦しみ」と闘うという違いを指摘し、「“論理的”にものを考える宗教が、仏教である」と書いています。このような比較から、仏教についても学ぶことができたのは、意外な喜びでした。本書の攻撃的なタイトルから、敬遠する方も多いと思います。

しかし、西洋思想の面白さ(恐ろしさ)、宗教=権力への痛烈な批判など、目からウロコの内容ばかりで、一気に読んでしまいました。以前、クリスチャンのアメリカ人の友人と話していた時のこと。話題が宗教に触れた途端、「ニーチェをどう思うか」と聞かれました。私は返答に困ってしまいました。その頃にこの本を読んでいたなら、逆に客観的な返答ができたのではと残念に思っています。

回答者:50代 女性


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