ビットコイン、暗号技術と通貨制度の両面から学べる一冊 | [書評]暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり


ビットコインとは言っていますが…

タイトルに「ビットコイン」と入っているので、ビットコインをブルーバックスの物理学本のように”詳しく”メカニズムから解説しているかと思ったら間違いです。本書の「はじめに」に以下のように書かれています。

本書は、注目が集まってきたビットコインを題材に、数理暗号・情報技術と通貨制度の両面から、マジメに暗号通貨について考えます。

つまり、ビットコインは題材です。中心は、数理暗号、情報技術のIT面と通貨制度の経済面です。

一般的には、「仮想通貨」と呼ばれていますが、本書では「暗号通貨」としていて、「暗号通貨」で主流となっているのはビットコインです。よって、結果的にビットコインを知ることになるので、ビットコインを理解したい人はIT面、経済面から勉強することができます。どちらかの面を強調している本は、ありますが両方の面で捉えているのは、ブルーバックスらしいところではないかと思います。

ビットコインを理解する上で前提として必要となる通常の通貨の意味や、国際送金の方式、それらの問題の解説を加えた上で、ビットコインのあり方が書かれています。

ビットコインはメリットいっぱい

私は、2013年にカナダでビットコインが一部のお店で使えるようになったと知って驚いたものです。ビットコインは、怪しいものだと思っていたもので。

本書では、メリットとして、国際送金における手数料の話が書かれています。今では、ネット操作で日本の銀行から海外の銀行に送金できますが、本書では経由する銀行での手数料により取引コストがかかり、下手をすると送金額を上回る(つまりお金を受け取るのにお金を払わないといけなくなる)ことが書かれています。

ビットコインの場合には、「国際送金の原理」の中で、送金人Aと受取人Bについてこう述べられています。

1. AとBがタイミングをあわせておこなえば、為替リスクもほとんどない
2. 100円程度の送金も、十分におこなえる

これは、銀行やクレジットカード会社が保証するシステムと異なり、ビットコインは自己責任であるため、リスクは高くなるがコストは安くなり、運用性も高くなるということです。

お金の流通という本来の目的以外に現状では投機においてリターンが期待できるのも事実です。もちろんリスクがあるんで怖いですが。

ビットコインは誰が運営しているのか

冒頭の「はじめに」やコラムで、マウントゴックスの破綻事件について書かれています。この事件があってビットコインを知ったり、ビットコインは危ないと思ったりした方もいるでしょう。ビットコイン自体は、安全強固なものとして本書では書かれています。

問題は、その取引所を運営するのが誰か?ということでした。マウントゴックスの場合、ITベンチャー企業であり、銀行のように安全性が高いとは言えません。銀行や証券会社が破綻する時期もありましたら、ITベンチャー企業だからダメということはないです。信用ある取引所を利用するしかないのです。

なぜビットコイン自体は安全なのか

第3章でビットコインを支える暗号技術について書かれています。一般に知られた暗号技術が書かれていますので、流し読みでも良いと思います。

ビットコインならではの”マイニング”や”ブロックチェーン”の方式については、精読をオススメします。ビットコインは、暗号技術が支えていることがわかります。

最後に

ビットコインだけを知るのであれば、ブルーバックスではなく、他のより専門的な本の方を読まれると良いでしょう。

本書の良いところは、現在の銀行、クレジットカード、中央銀行、はたまた江戸自体の金融の話まで盛り込んで、「ビットコインって現在の貨幣と比べてどうなのよ」ということを説明してくれているところです。


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