四色問題の長い歴史と驚くべき解法とは | [書評]四色問題 どう解かれ何をもたらしたのか

四色問題 どう解かれ何をもたらしたのか
著者: 一松 信
ISBN:4062579693 / 発売日:2016-05-20
出版社.: 講談社

四色問題の解決までの経緯とそれが残したもの

四色問題は、「平面上の地図は四色で塗り分けられる」という、有名な問題で、東野圭吾氏の「容疑者Xの献身」でも登場します。本書は、四色問題の発生から、それを解こうとする人々の挑戦と苦悩、そしてその解明と問題点について書かれています。

四色問題にまつわる歴史

有名な数学者のド・モルガンに、学生のフレデリック・ガスリー(のち物理学者)が、兄のフランシス・ガスリーからフレデリックへの質問をさらに質問したことが発端となっています。その始まりから、ケンペ、テイト、ヒーウッド、バーコフ、フランクリン、ルベーグ、ヘーシュの証明への挑戦と失敗を経由して、ケネス・アッペルとヴォルフガング・ハーケンによる証明に至る経緯を詳細に説明しています。そして、最後に証明方法の問題点について論じています。

挑戦者たちの背景や、関連する他の命題も

四色問題を証明するための過程で、登場する人物たちが考慮した多くの命題が面白いです。つまり、本書は四色問題の証明だけに突き進むものではなく、挑戦者たちの背景や関連する他の命題についても書かれています。

そして何と言っても、四色問題の証明方法がコンピュータの長時間の計算による力わざであるということにびっくりしました。未だに数式での証明が行われていません。四色問題は、知っていましたが、まさかコンピュータで証明することが許されるとは思っていなかったので驚きです。それを踏まえて、最終章では、コンピュータによる証明の意味について、「使ってはいけないのか?」が解説されています。最終章で著者は次のように書いています。

計算機による大規模なシミュレーションによる計算理学の方法は、すでに理論・実験と並ぶ第三の科学的手法として根付いている。数学は、自然科学とは異なる面が多いにせよ、やはり例外ではない。

コンピュータによる証明は、現実的な方法として許容されているわけです。

四色問題の解決に秘められた大変な苦労

本書の意義が、最終章の最後に次のように書かれています。

四色問題は今や「一八五二年ガスリー兄弟によって提唱され、一九七六年アッペル=ハーケンによって解決された」と短い文に要約できる。しかしその文章中にどれだけの大変な苦労が秘められていたのか、その表面を眺めてきたのがこの本である。

まさしくその通りです。

四色問題 どう解かれ何をもたらしたのか
著者: 一松 信
ISBN:4062579693 / 発売日:2016-05-20
出版社.: 講談社

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