どんな人生にも希望はある。“ボロボロ”な人に読んでほしい | [書評]ボロボロになった人へ

ボロボロになった人へ
著者: リリーフランキー
ISBN:4344410033 / 発売日:2007-08
出版社.: 幻冬舎

どんな人生にも希望があると勇気づけられる一冊。

本書は、それぞれに人生を割り切っているような、諦めてしまっているような主人公が登場する話が集められた短編集となっています。自分の境遇に満足するでもなく、そうかと言って絶望するでもなく。精一杯努力して躍起になるでもなく、捨て鉢になるでもなく。

決して恵まれた状況とは言えない人生をひたすらに淡々と生きる主人公たちがその中で人生の光を見出していく様は、まさに“ボロボロ”な人だからこそ共感できるような、ささやかだけれど圧倒的な希望を感じられるストーリーになっていると思います。

魅力的な登場人物たち

収録されているストーリーの一つである「大麻農家の花嫁」では、ある程度の年になるまで結婚出来ず、もう恋愛すら出来る気がしない多恵子という女性が主人公となっています。

自分の容姿に自信がなく、都会では自分の需要はないと感じた彼女は、こんな自分でも求めてくれる人がいるであろうと田舎の農家へと婚活に向かいます。

東京では余り着ないような派手な服を着て、ウケが悪いとわかっていても、わざと派手な化粧をした。東京の人である私を演出する為に多恵子は精一杯のことをした。

ここまで読む限りではプライドの高い嫌な女性の話なのかと思ってしまいます。

しかし多恵子は、精一杯彼女なりに努力して赴いた先で見合い相手の父親から服装も化粧も派手で似合っていないと言われた途端に、気分を悪くすることもなくあっさりと化粧を落としてしまいます。

全ては結婚のためとはいえ、コンプレックスに感じていることをズバリ指摘されても動じないという展開に驚かされ、主人公に対して不思議な好奇心と好感を持たずにはいられず、ぐんぐんと物語に引き込まれてしまいます。本書には、そんな不思議な魅力のある人物が多く登場します。

ダークなのに、心温まるストーリー

この本に登場する人物たちは、あまり恵まれた環境にはなく、一見魅力的とは言い難いように思います。彼らは物語の初めこそ、どことなく無気力で生気を感じられない雰囲気を漂わせていますが、しかし物語を通してそれぞれに希望を見出し、生気を取り戻していきます。

そんな主人公のひたむきさ、純粋さに不思議と共感し、気付くと彼らを応援したいような気持になっています。ダークな内容が多いように思いますが、嫌な後味などはなくむしろ爽快で、物語の最後は朗らかな気持ちになってしまうのも、本書の大きな魅力だと思います。

ボロボロになった人へ
著者: リリーフランキー
ISBN:4344410033 / 発売日:2007-08
出版社.: 幻冬舎

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