400年続く「結界師」の一族に生まれた良守の話 | [書評]結界師

結界師
著者: 田辺 イエロウ
ISBN:4091270611 / 発売日:2004-02-18
出版社.: 小学館

「烏森」とはいったい何なのか

400年続く「結界師」の一族に生まれた良守(よしもり)が、妖(あやかし)に力を与える「烏森」の土地を、そしてその周囲にいる人々を守り奮闘する話。

昔、烏森というとても霊的エネルギーの強い一族がおり、妖をひきつけて困っていた。一族が滅んでも土地に力が残り、妖を引きつけてしまい、周りに被害を出してしまう「烏森」の土地を400年守ってきたのが結界師の墨村家と雪村家だった。その次期継承者である良守と時音(ときね)はお隣さんで幼馴染だが、家同士の仲が悪いため妖退治をしながらケンカばかり…。

「烏森」の噂を聞きつけた妖たちが幾度となく襲ってくる中、時音が良守をかばうために大けがをしたことがきっかけで、良守はだれも誰も傷つかなくていいように烏森を封印すると言い出す。「烏森」とはいったい何なのか、封印などできるのか。泣き虫だった良守が真実へせまっていく姿が力強い。

ところどころに心温まる話や異能者として生きることでの殺伐とした感情など様々な要素がちりばめられている。

時音を傷つけさせないこと

このマンガの一つの魅力は良守という人物だと思う。小さいころは泣き虫で、なぜ自分にこんな役目があるのか…とウジウジしていた。成長してからも一見無気力に見えなくもない。しかし、とても優しく、困っている者を見過ごせない。それがたとえ成仏すべき霊や妖であっても変わらない。彼自身は自分を優しいだなんて思っていないだろう。ただ、じぶんがそうしたいから行動しているだけなのである。そのまっすぐな良守の優しさに何人もが救われていく。そのまっすぐな何をしでかすかわからないところが愛される所以だろう。

そんな良守が、特にこだわっているのが「時音を傷つけさせないこと」である。自分のせいで大けがをしてしまった時音を見てから、ときには自分が傷ついても時音を庇おうとしてきた。

「もう誰かが傷ついて…
自分は泣いてるだけなんて、イヤなんだ。
だから俺は…
強くなる!!」

その言葉通り良守はめきめきと力をつけていく。

異能者と「普通の生活」

結界師は特別な能力をもっていて、普通の人にはできないことをする。そのような能力がある「異能者」は、ほかにも数多くおり、良守たちは多くの異能者とかかわることになっていく。異能であるがゆえに家族と話されてしまったり、普通の生活ができなかったりした人たちの苦悩やそれに対する良守の見方も見どころの一つだ。

結界師
著者: 田辺 イエロウ
ISBN:4091270611 / 発売日:2004-02-18
出版社.: 小学館

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