「グランギニョルの索引」が新たなグリム童話を開く | [書評]断章のグリム 2巻 ヘンゼルとグレーテル
悪夢は終わらない
グリム童話と怪異、ホラーであってもそこまでおどろおどろしくないシリーズの第二弾です。罪を追いかけてその大きさが、人々を呑みこんでいくお話のように感じました。前回は、蒼衣のクラスメートが出てきましたが、今回は雪乃側の学校が出てきます。
雪乃のクラスのクラス委員長は、だれも関わろうとしない雪乃に物おじせずに話かける存在。雪乃はそれが煩わしい。委員長は学校が大好きで、クラスメイトも大事。
そんな彼女は、過去に大きな傷をもっていてそれが今回の「泡禍」を呼び込むことになるのです。
そこにいるのは、だれ?
〈私の痛みよ、世界を焼け!〉
その日、蒼衣は「泡禍」を倒す組織「ロッジ」に所属しようと決めた。騎士になることを決意したのだ。グリム童話になぞられて現れた「泡禍」に呑まれ、蒼衣の断章でこの世から消えたクラスメイト。
その存在は、同じく断章をもつロッジの仲間のひとりに名前を消され、人々の記憶からも消えた。同じような存在を出したくないと思う蒼衣の思いをあざ笑うように、夢見子の断章「グランギニョルの索引」が新たなグリム童話を開く。幼いころに車へ放置された赤ん坊を、助けられなかったことを悔やむ委員長。
彼女は駐車場にとまる車が怖い。
いつも足早に通り過ぎ、なにもないはずのそこから音がした日から過去が彼女を追いかける。それは、記憶であり、思いであり、目で見える出来事だった。
居合わせた蒼衣と雪乃は霊能力者であると彼女に告げ、解決するために手を貸すと切り出す。きっと、彼女が今回のグリム童話「ヘンゼルとグレーテル」に関わっていると感じて―。
物語を理解し、共有しなければ使えない蒼衣の断章
「グレーテルが魔女になるんだ」
赤ん坊を見殺しにした罪悪感に悩ませられる委員長のもとへ、逆恨みした赤ん坊の母親が現れる。
かつても逆恨みし、手紙を送り付けた彼女。
今回送ってきたものは、小さな骨。
そして、委員長の幼馴染は急に親しくし始めた雪乃の存在を疑う。
いろいろな物語を示すかけらが現れながらも、その配役をつかみきれない蒼衣。
痛みを炎に変える雪乃の断章とは違い、物語を理解し、共有しなければ使えない蒼衣の断章。
そのために注意深く割り振られている役割と、物語を読み解こうとする。
そして、この「ヘンゼルとグレーテル」の魔女が感染していくことに気がつくのだった。