お父さん、お母さん、わたしはもう二度とあなた方に会えません。掘られた溝は、あまりにも深いのです。 | 本で出逢った感動の名言

スキップ
著者: 北村 薫
ISBN:4101373213 / 発売日:1999-06-30
出版社.: 新潮社

本で出逢った名言・名セリフ

お父さん、お母さん、わたしはもう二度とあなた方に会えません。掘られた溝は、あまりにも深いのです。 会えるとするなら、いつか、生を越えた時。

スキップ より

そのセリフに感銘を受けた理由

北村薫さんの名作、時と人の三部作『スキップ』より。物語終盤に「時の欠落を埋めることなど出来ない」と悟った主人公の独白です。この作品を読んだのは高校生の時でしたが、主人公の境遇と心情を考えて、リアルで泣いてしまったことをよく覚えています。

主人公の真理子は、突然高校生から42歳になってしまい、原因も元に戻る方法も分からないまま物語は進んでいきます。当然のごとく、つい先日まで高校生だった人間としては理不尽な罵倒や問題の数々に直撃します。年上の男性からババアと罵られる。実家がなくなっている。夫がいて、子供までいる。特に、両親が他界していたことは超絶級の理不尽な衝撃だったと思います。それでも真理子は一度たりとも泣きませんでした。子供がいるのだからと料理に挑戦したり、わかるわけのない仕事にも前向きに取り込んでいく。真理子は、そんな凛としたカッコイイ女性です。そんな彼女の姿を見つめてきたからこそ、上記の独白は心に響きました。

物語終盤で高校時代の友人と再開し、現実を悟った時。一度たりとも泣かなかった彼女が、人目もはばからず大泣きしながら、両親にはもう二度と会えないと悟る文面が悲しくて辛くて。それまでの葛藤や奮闘も相まって、涙失くして読まずにはいられませんでした。時は戻らない。

『スキップ』は、そんな残酷な現実と、それでも生きることの意味を教えてくれたとても素晴らしい作品でした。少々昔の小説ですが、他にも感動的なセリフや文面がたくさんある良作なので、機会があれば是非皆さんにも読んでいただきたいと思います。

回答者:30代 女性

スキップ
著者: 北村 薫
ISBN:4101373213 / 発売日:1999-06-30
出版社.: 新潮社

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