進化し続けるロボット技術に思う「ロボットとは何か」「人間とは何か」 | [書評]ロボットは涙を流すか

ロボットは涙を流すか
著者: 石黒 浩
ISBN:4569775632 / 発売日:2010-01-21
出版社.: PHP研究所

「不気味の谷」を越えた時、ロボットは我々の友人となる

本書は工学博士であり、愛・地球博に女性型アンドロイドを出展して話題となった黒岩浩氏の著書です。

ロボットの中でも人間そっくりに作られたものを一般的に「アンドロイド」と呼んでいます。しかし彼らがあまりにも人間に近すぎて、人間は彼らに対して言いようのない不気味さを感じるのだといいます。これが「不気味の谷」と呼ばれる現象であり、この谷を乗り越えると一変して人間はアンドロイドに深い親近感を持つようになります。

おそらくこの「不気味の谷」現象は、人間がごく普通に持っている防衛本能の一種なんだろうなと思います。「このロボットは悪いやつかも知れない。もし犯罪に巻き込まれたらどうしよう」「知らない間に私の個人情報を盗んでいるんじゃないか?」などなど、人間のようであり、また完全な機械とも言いきれない存在への警戒は計り知れないものです。

しかしそれを乗り越えた時、人間はアンドロイドに心を開き、あたかも二人の間に絆があるような感覚をおぼえるのです。

SF映画が警告するロボットの暴走

SF映画でお約束とも言えるのが、知能を持ったロボットの暴走。
人間より遥かに優れた頭脳とパワーを持つロボットが自分の意識を持つと、やがては人間に反旗を翻し、ロボットだけの王国を作ろうとします。アイザック・アシモフが提唱するロボット三原則を打ち破り、ロボットがタブーを犯す時、人間はただ無力な存在でしかありません。

これに近いものとして、先日ニュースで取り上げられていた、「自動運転による車の事故は一体誰が責任を負うのか?」という問題を思い出しました。これはまさにロボットの暴走の初期事項と呼べるのではないしょうか?

事故が起きたのは運転手のせいか、はたまた車を作った会社のせいか?車に限らずあらゆるものがオートメーション化していくにつれて、現在の法律ではカバーできない事態がさらに増えていきそうです。

「ロボットとは何か」を通して考える「人間とは何か」

私たちは、人間とロボットのあいだのグレーな部分がで揺れ動きながら、SF映画を観ているのだと思う。

人間そっくりのロボットが人間の仕事を引き受け、表情や言葉、さらには感情の表し方まで人間っぽくなると、「じゃあ私たち人間って何なの?」という疑問点にぶつかります。
ロボットの存在を通して考える「人間とは何か?」これが本書の大きなテーマです。

これまで人間ほど高い知能を持ち、道具を使いこなし、生態系の頂点に君臨し続けている存在は他にいなかったはずです。そこで人間より優れた存在が登場し、逆に人間を支配するようになったらどうなるのでしょうか。

科学技術が発展するにつれて、ロボットと人間の境目はどんどん曖昧になりつつあります。身近な人がいつの間にかロボットにすり替わっていても気づかない…そんなSF映画のような未来で、人間は初めて自分の存在意義につい悩み、自分と向き合うのかもしれません。それが人間が人間である何よりの意味なのだと私は思います。

ロボットは涙を流すか
著者: 石黒 浩
ISBN:4569775632 / 発売日:2010-01-21
出版社.: PHP研究所

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