さかもと未明氏が語る発達障害との向き合い方 | [書評]まさか発達障害だったなんて

まさか発達障害だったなんて
著者: 星野 仁彦
ISBN:4569809480 / 発売日:2014-09-13
出版社.: PHP研究所

自分も「大人の発達障害」。だからこの本を手に取った

人の話を聞かない、急に感情的になる、約束を守らない―「変わった子」といじめられて育ち、その原因に気づかないまま職場や家庭の「困った人」に。さかもと氏もそうだった。「甘え」だと家族に否認されてきた彼女は、最近、発達障害の専門医である星野氏と出会い、ADHDを合併したアスペルガーと診断された。悩み抜いた者にとって、それは驚きであり福音だった。

最近メディアでよく目にする「発達障害」。かくいう私も、そんな発達障害(ADHD、自閉症スペクトラム)を持っている一人です。しかも、ここ1年で初めて発覚し、私自身も心の整理や今後の対策について戸惑っている最中だったりします。

発達障害に関する本はたくさん出ていますが、そのほとんどは子どもの当事者を扱ったもの。大人になって障害が発覚し、社会生活や人間関係が困難な状態に陥っている人を扱ったものは、まだまだ少数です。

そんな中で、著名人であるさかもと未明氏が発達障害を持っており、過去から今までのことを赤裸々に綴る本がありました。それがこの「まさか発達障害だったなんて」でした。

さかもと未明への見方が大きく変わった一冊

さかもと未明氏は、私の中で表すなら「そこそこ美人で頭はいいけど、子供っぽくてかなり変わった人」というイメージでした。

しかし本の中で彼女の生育歴を読み進めていく中で、彼女のエキエントリックなキャラクターは、発達障害による周囲とのズレ、そしてそこから生まれた抑うつ的な感情が根ざしていることを感じ取りました。

そして、自分との共通点も数多く感じました。生育歴を見ると、彼女の母親もおそらく発達障害を持っており、家庭内の教育の段階で世の中の「普通」「暗黙の了解」などをうまく理解できずに大人になってしまったこと。

相手の気持ちや周囲の空気が読めず、基本的な人間関係がうまく築けないこと。

自分が何を間違っているのかはわからない、けれど自分は普通の人とは明らかに違う、だから周囲に嫌われている、迷惑をかけているという罪の意識だけはズッシリと心に抱えていること。

当事者の私にとっては、読んでいく中で彼女の人生を追体験しているような気分にさえなりました。さらに、本書は精神科医である星野仁彦氏の会話も記されています。

星野先生は、さかもと氏が発達障害を持っていることを診断した上で、さかもと氏へこのように語りかけています。

「あなたは脳の報酬系が器質的に弱かった。ドーパミンなどの代謝が少ないということです。それで、ふつうの人なら感じる幸福感やふつうの欲求が感じられず、うつなどになった。たいへんだったね。でも見つかってよかった。これからは、あなたに必要な薬や生き方を探していけますからね。」

私も医師から同じような言葉をいただき、感激して涙を流したことを思い出しました。

発達障害は、誰にでもありうる特性の一つなのかも知れない

私が30代になって初めて診断を受けたように、大人になって自分が発達障害の当事者であることに気づく、という例は多いと思います。発達障害の認知度が広がっていく中、自分が発達障害であること、もしくは発達障害かもしれないと考える人は、今後さらに増えるのではないかと思います。

日本人は殊に周囲との協調や空気を読むことが美徳とされている。そんな中で、人間関係や社会生活に馴染めず苦しんでいる人に一度読んで欲しい一冊です。
発達障害は決して自分の性格のせいではない、誰にでもおこおりうる先天的な特性なのだと考えることで、心がスッと軽くなるのではと思います。

まさか発達障害だったなんて
著者: 星野 仁彦
ISBN:4569809480 / 発売日:2014-09-13
出版社.: PHP研究所

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