サービス業界主流の日本で、本当に勝ち残れるホワイト企業とは | [書評]ホワイト企業 サービス業化する日本の人材育成戦略


身を持って味わったブラック企業の恐ろしさ

近年大きな社会問題にもなっている「ブラック企業」。

言うまでもなく、人材を大量に採用し、過酷な環境で使い潰す企業を指す言葉です。

私はかつて、ブラック偏差値ランキングでも偏差値70越えの企業で働いていたことがありました。その業界では歴史があり、誰でも名前を聞いたことがある企業です。

不思議なことにブラック企業で働いているうちは、「ここはブラックだ!今すぐ辞めてやる!」なんて考えは浮かびませんでした。おそらく、その時はある種の洗脳状態にあったからでしょう。会社を信じて働く以外の選択肢は、その時の私には存在しなかったんです。

ところが、がむしゃらに働く中で体を壊し、精神的にもかなり参った時期がありました。そしてこれからの働き方について相談したところ、会社はあっけなく自分を切り捨てました。

入社式で、「社員は家族同然!」と熱く語ってくれたのは嘘だったのか?怒りを通り越して、呆気に取られたのをよく覚えています。

今でも体の一部に後遺症が残ってしまい、会社には恨みしかないです。もう看板も見たくないレベルです。

スターバックスに見る、ホワイト企業の姿勢とは

では、こんなむちゃくちゃなブラック企業に対して、「ホワイト企業」とは、いったいどういう企業を指すんでしょうか?

この本ではホワイト企業の重要な条件として「人材教育に力を入れていること」を唱えています。

たとえば大手コーヒーショップのスターバックス。実はスターバックスでアルバイトをしているだけで、就職では有利になるなんて都市伝説もあるんですよね。
スターバックスはアルバイトを一人雇うのにも、非常に厳選をする企業として知られています。

アルバイト候補の人が来ると、まずコーヒーを一杯与えて、「ちょっとお店を見ていて」といいます。

その時間は約四十五分。アルバイト候補の人はコーヒーを飲みながら、店内のお客さんやスタッフの働き方などを見ます。

四十五分経つと、店長が「じゃあ、ちょっと話そうか」と来て、最初に「どういう印象だった?」と聞きます。アルバイト候補の人は、たとえば「あのアルバイトの彼女がテキパキとして、笑顔が素晴らしくて、仕事を楽しそうにやっているので、私もあんなふうになれたらいいなと思いました」などと答えます。そうすると、「ああなれたらいいと思う?」「それはどうして?」というふうにどんどん深く聞いていく。

つまり、「この店で働く事によって、あなたはどうなりたいのか?」を聞くわけです。さらに、「この店ではたらくことは、君の人生にとってどういう意味があるのか?」を聞く。そうすると、「アルバイト代を稼ぎたいだけ」と思っている人は、ビックリして」、「これはちょっと違う」と思い、来なくなります。

うーん、私がアルバイト候補なら、これだけで会社に惚れてしまいそうです。

「人を大切にする企業」って口で言うのは簡単ですよね。ブラック企業に限ってこういうスローガンを声高に唱えていたりもするんですが・・・。

じゃあ実際、どういう風に人を大切にしているのか?という話です。

スターバックスでは、候補者が本当に自分たちの会社に馴染む人材かどうかを吟味します、同時に、候補者にとってスターバックスという会社が彼らの人生にどんな影響を与えるのかをとことん考えてくれます。

だから、たった一人のアルバイトと一つの会社が双方得をする、Win-Winの関係を築ける。これがスターバックスがホワイト企業と呼ばれる所以です。

対照的に、来るもの拒まず人員をかき集めて酷使しまくり、どんどんふるいにかけて脱落させていくような会社は、いつまで経ってもスターバックスのような企業にはなれないのです。

ホワイト企業で働きたい方は必読

日本では、高学歴かつ優秀な人材は、ほとんど大企業が持っていきます。

そんな中で中小企業は人材育成にかける十分な資金がなく、特に非正規雇用が多いサービス業の離職率は非常に高くなっています。

おもてなしの精神が高く、世界的にも質の高いサービス業を提供する日本。これから生き残るの
は、人材をかき集めて使い捨てるだけの企業か?それとも人をじっくり育てて、互いが成長できる環境を作ってくれる企業か?答えは明確ですね。

経済の先行きが不透明な中、真のホワイト企業は、まだまだひと握りです。この「ホワイト企業」は、今の会社からに疑問を持ち転職を考えている人、また、これから起業しようと考えている人に一度は読んで欲しい一冊だなと思いました。


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