「おーとーせよ。こちらあみ子、こちらあみ子。おーとーせよ」 | 本で出逢った感動の名言

こちらあみ子
著者: 今村 夏子
ISBN:4480804307 / 発売日:2011-01-10
出版社.: 筑摩書房

第二十六回太宰治文学賞受賞作である「こちらあみ子」は、もともと「新しい娘」という題で受賞しています。単行本化するにあたり改題され、「こちらあみ子」という本となって流通するに至りました。

父親からの誕生日プレゼントであるトランシーバーを使って、あみ子はこのセリフを言います。この日は母親の出産予定日でもあり、きたる弟とのスパイごっこのために兄と練習しておこうと考えたのです。このセリフは兄だけに対してではなく「幸福な未来」に向けての呼びかけとも考えられます。

しかし、向こう側からの応答はなく雑音だけが返ってくるのです。後の悲しい現実を予感させ、その現実の重みを理解しきれないあみ子とのズレが顔を出し始めます。

この場面でしか出てこない「こちらあみ子」というセリフですが、小説全体の全てを象徴しており、読後につぶやいてみるとあみ子の呼びかけに応えたいとする気持ちが自分のなかにあるのに気がついて、なんとも言い知れぬ感動に包まれます。

回答者:20代 男性

本で出逢った名言・名セリフ

「おーとーせよ。こちらあみ子、こちらあみ子。おーとーせよ」

こちらあみ子 より

こちらあみ子
著者: 今村 夏子
ISBN:4480804307 / 発売日:2011-01-10
出版社.: 筑摩書房

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