歌詞を聴くのがもっと楽しくなる | [書評]声に出して踏みたい韻
「韻」を正しく知ってほしい、それだけのために書かれた一冊
韻といえばどんなイメージだろうか。
「インテル、入ってる」や「真っ赤な太陽 君を知りたいよう」
こういったものが韻のイメージではないだろうか。
もちろん、上のようなものも韻の一種だ。
しかし、多くの人が誤解しているのは、「イン〈テル〉、入っ〈てる〉」や「真っ赤な〈太陽〉 君を知り〈たいよう〉」のように、同じ文字を一致させないといけない、と思っている点だ。
韻の基本は母音を合わせることだ。例えば「読書」で韻を踏もうと思ったら、母音は「おうお」になる。「少女」「没後」「トクホ」などの単語はすべて母音が「おうお」で一致するので、韻を踏める。
「〈アルミ缶〉の上に〈あるミカン〉」はダジャレだが、「〈あるミカン〉の上で〈待つ時間〉」なら韻だ。
そういった韻の基本から、実際の音楽の歌詞を参考に、韻を徹底的に解説している。
「韻」を知って、どうなるの?
上記のようなことを言うと、「韻なんて学んでどうなるの?」という人もいるかもしれない。「ラップとかあんまり聞かないし」というような人も。でも、韻を知ると、今後の人生、すべての音楽の歌詞が、今まで以上に楽しく聞こえるはずだ。
本書ではラップ以外にも、Mr.Childrenの「しるし」や、「アナと雪の女王」の「Let it go」などの歌詞についても解説されている。
韻はラップ以外のところでも使われている技術だ。この本を読んで、韻の基本を知ってから音楽を聴くと、いろんな歌詞で「あっ、ここは韻を踏んでいるな」というのがわかるようになる。それはある意味、作者の秘密をひとつ知るようなものだ。歌詞のメッセージ性を楽しむだけではなく、遊び心のようなものまで知ることができるのだ。
また、本書には書かれていないが、私は音楽以外にも韻は重要な役割を果たしていると思っている
例えば、ギャグや替え歌はにも韻のテクニックが活きている。
例えば、FUJIWARAの原西さんの「伯方の塩」のリズム・メロディで「歯型を見ろ!」というギャグがあるが、「伯方の塩」と「歯型を見ろ」が同じ母音で韻を踏んでいるから面白いのだと思う。
替え歌でも嘉門達夫さんが「函館の女」の「はるばる来たぜ函館へ」を替え歌で「キャラメル拾ったら箱だけー!」と歌っていたが、これも「函館」と「箱だけ」の母音が同じだから作られたものだろう。
「韻」と意識して作っていたかはわからないが、日常的に「この言葉、似てるな」と思ったときは母音が同じなのかもしれない。
この本を読むだけで、音楽、ギャグ、替え歌、キャッチコピーなど、すべてのものが少し楽しくなるのだから、読まない手はない。