アメとムチはもう古い。動機付けに必要な「自律性、熟達、目的」とは? | [書評]モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか


成功すれば高い報酬と称賛を与え、失敗すれば叱責し尻を叩く。いわゆる「アメとムチ」と呼ばれる手法で、企業において社員のモチベーションを上げて働かせるために日常的に行われている。

しかしこの手法には本当に効果があるのだろうか?本書はそう疑問を投げかける。

私にも覚えがあるのだが、「毎月一番契約件数の多かった人には○円のインセンティブを与えます」といった「アメ」を提示されると、最初こそ成績は上がるが長くは続かない。ではどうすればモチベーションを上げる事が出来るのか?本書は最新の科学の見地からその答えを提示している。

創造性を失わせるアメとムチ

そもそも「アメとムチ」は単純作業の能率を上げるために導入された手法である。しかし、現代において単純作業はどんどんコンピューターに取って代わられており、人間が行う仕事は発想力や創造力が必要なものにシフトしていっている。そのような創造性を要求される仕事において「アメとムチ」は逆効果となる。何故なら報酬に囚われて自由な発想が失われ、叱責を恐れて無難な発想を生み出すのに終始してしまうからだ。

内発的動機づけによってモチベーションを高める

本書では上記のような「アメとムチ」の手法を「モチベーション2.0」と呼び、我々はこれを新しいOS「モチベーション3.0」にアップデートしなければならないと説いている。ではモチベーション3.0とはどのようなものなのか?これは自らの内側から興味や欲求、つまりは内発的動機を原動力として仕事をする事で、モチベーションが高まるという考え方である。以下に著者の言葉を引用しよう。

[高い成果を上げる秘訣は、人の生理的欲求や、信賞必罰による動機づけではなくて、第三の動機づけ-自らの人生を管理したい、自分の能力を広げて伸ばしたい、目的を持って人生を送りたい、とい人間に深く根ざした欲求-にあると、科学で証明されている。]

モチベーションを高めるための重要な要素

では、どうすれば内発的動機を原動力とし、高いモチベーションを持って仕事に取り組めるのか?本書ではモチベーションには3つの重要な要素が提示されている。以下でそれを紹介しよう。

1.自律性(オートノミー)=自分の人生を自ら導きたいという欲求。
2.熟達(マスタリー)=自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動。
3.目的=自分より大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい、という切なる思い。

即ち、大きな目的を持ち、その目的のために自ら進んで自己を高める努力をしていく事で高いモチベーションが保てるという事が科学的に証明されている、と著者は断言している。

本書には上記の要素を実際の仕事に取り入れるための手法や、実際の企業で行われている例が多数挙げられている。モチベーションを保つのに苦労している方は是非本書を手に取って、人のモチベーションに対する最新の科学によるアプローチに触れてみてほしい。


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