[書評]「納品」をなくせばうまくいく ソフトウェア業界の“常識”を変えるビジネスモデル


納品なきシステム開発を提唱した本書の書評です。

本書はシステム開発における納品を前提とした一括請負契約というビジネスモデルの弊害を説明し、そこからの脱却を目指した「納品をなくしたシステム開発」の提唱を行っているものです。

現行では、要件定義で定められたシステムを、決められた期間と費用で完成させて納品するというのが主流です。

仕様も予算も期間も要件定義の段階であらかじめ定められてしまうため、開発過程での柔軟な対応が出来ず、システム、時間、費用の全てが固定化されることで発生する種々の弊害が現在のシステム開発の分野で大きな問題となっているということを著者は説明しています。

その上で、提唱しているのが「納品のないシステム」です。

これは、簡単にまとめると月額定額制で顧客の要望にダイレクトに応えられる開発陣を用意することで、随時システムを更新していくビジネスモデルです。完成形のシステムを納品するのではなく、随時改善可能なシステムを月単位でサービスとして提供するようなイメージです。

ただ、このモデルでは本書内でも言及がありますが、大規模なシステムには適していないという問題点もあります。また、仕様変更を重ねたシステムというのは複雑になりがちで、その仕様の把握は開発担当のプログラマに負うところが大きくなります。

コードレビューやワークレビューだけでは限界があるため、そこら辺の問題をどうするのかは今後の課題といえるかもしれません。

どちらにしろ、既存のシステム開発に一石を投じる内容である本書は、現行の開発に限界を感じているエンジニアにはシステム開発の未来の一つを感じさせてくれる内容になっています。


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