東野圭吾には珍しい、ほっこりするファンタジー作品 | [書評]ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟
著者: 東野 圭吾
ISBN:4041014514 / 発売日:2014-11-22
出版社.: KADOKAWA/角川書店

東野圭吾の卓越したストーリー展開

この本は、ガリレオシリーズなどでよく知られた、私も大好きな東野ミステリー作品ではありません。人情物語作品と言えば良いでしょうか。ちょうど、心がほっこりする作品を探していたときに、タイトルにある「奇跡」に引っかかって買ったものが、たまたまそれが東野作品だった経緯があります。あまり東野作品で、気分晴れ晴れと終わるものがあるとは思わなかったので、この作品は読書の範囲を広める収穫でした。

本書の概要は、裏表紙の説明の一部を借りると、以下です。

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが…..。

非現実的な話ですので、ファンタジーではあります。異なる時間でやりとりされる手紙によって、その手紙に関わる人々の心が変化していきます。

時空を超える話

東野作品に共通の十分に練られた構成が素晴らしいです。ファンタジー作品というとちょっと抵抗ありますので、「ほっこり作品」と言わせてもらいますが、このジャンルにおいても、ミステリーと同様に話の展開が的確であり、矛盾なく進められています。読者を、冒頭から不思議な世界に連れて行き、次第に手紙のやりとりが人々にどのように関係していて、そして最後には、一つのつながりとして奇跡を起こす、のかどうか、読んでみて欲しいです。

また、他の東野作品と同様にこの本は読みやすいです。時空を超える話でもありますので、過去から現在までの出来事(一例を挙げると「ウォークマンの登場」)がうまくポイントとして使われており、話の臨場感を高めます。時代背景から考えると、若い人より中年のおじさん(私です)の方が、話に引き込まれやすいでしょう。「この悩み相談があの出来事が繋がるのか」と感心させられます。

見た目は大人、心は少年

主人公となる3人は年齢的には成人していますが、心は少年です。無茶なことをする若者として最初は登場しますが、紆余曲折ありながら、最後にはホッとさせてくれるまで成長します。この作品は、奇想天外な話を通じて描かあれた若者の成長ストーリーなのかもしれません。

ナミヤ雑貨店の奇蹟
著者: 東野 圭吾
ISBN:4041014514 / 発売日:2014-11-22
出版社.: KADOKAWA/角川書店

あわせて読みたい