どこにでもいそうな、平凡な主人公に共感できる

表題作の主人公は、小さな出版社で働くごく普通の女性です。派遣社員で、なんとなく会社に自分の居場所を感じられず、プライベートでも友達はおらず、特に家族仲が良い訳でもなく、彼氏には振られ…と、仕事もプライベートもぱっとしない。

そんな彼女はお昼には節約のため、毎日お弁当を持参しています。彼氏に振られたばかりで意気消沈の主人公は、上司であるアッコちゃんにこうと提案されます。

来週一週間、私のお弁当を作ってくれない？

もちろんお礼はするわよ。私の一週間のランチのコースと取り替えっこするの

彼氏に振られたばかりでそれどころではない主人公ですが、上司であるアッコちゃんにNOとは言えず、なかば強引にその提案を受けることになります。初めは乗り気でなかった主人公ですが、この一週間のランチの取り替えっこが彼女に変化をもたらすことになります。

魅力的な上司のアッコちゃん

表題作に登場するアッコちゃんという人物ですが、非常にパワフルでまるで台風のような人物です。

読んでいるだけでもそのパワフルさをまるで実際に身を持って体験しているような気持になります。仕事をバリバリとこなすキャリアウーマン風のアッコちゃんは、社内でも一目置かれ恐れられている存在です。

一見怖そうなアッコちゃんですが、実はとても面倒見が良く情に溢れた人物なのです。物語の初めのほうでは、つっけんどんな物言いなどちょっと怖い印象なのですが、読み進めていくうちに、こんな上司がいたら良いなと思わずにはいられなくなるような、素敵なキャラクターです。

ちょっと疲れた時に、元気をもらえる物語

本書には表題作を含め４つの短編が収録されているのですが、それぞれの主人公は何となく停滞した生活を送っています。失恋、会社での面倒な人間関係、なかなか結婚できない焦り、上司としての在り方に悩むなど、多くの人が共感出来るような悩みごとを抱え、疲れた日常を送る主人公たち。

そして同時に、それぞれの物語には主人公と対照的にいきいきと人生を送っている人物も登場します。彼らは主人公に元気を与え、また同時に、本書を読む読者にも元気を与えてくれます。