[社内教育]メンター制度の作り方 | [書評]メンタリング入門

メンタリング入門
著者: 渡辺 三枝子
ISBN:4532110939 / 発売日:2006-01
出版社.: 日本経済新聞社

日本でなかなか浸透しないメンター制度

アメリカで始まり、日本の会社にも取り入れられるようになったメンター制度。会社の仕事にある程度慣れてきた方は、新人に対して「○○さんのメンターをお願いするから、よろしくね」と上司に言われ、困惑した経験も多いかと思います。

まずはメンターについての定義と、メンターがおこなうメンタリングについての説明です。

「(メンターとは)職業という世界において、仕事上の秘訣を教え、コ-チし、役割(ロール)モデルとなり、重要な人物への紹介役を果たすなどによって、メンタリングの受け手(メンティ)のキャリア発達を援助する存在」と定義しています。

メンタリング行動は、メンターである先輩と受け手(メンティ)である若手との間の直接の人間関係で繰り広げられる行動です。

内容を聞く限りではいい感じですが、アメリカで実施されている制度をそのままコピーして使っているため、日本の企業ではいまいち潤滑に機能していないケースが多いようです。

私が昔務めていた職場にもメンター制度がありましたが、私のメンターの女性は彼女自身が人を育てることに慣れておらず、しかも気分屋で好き嫌いが激しい人だったので、私は彼女と信頼関係を築くどころか仕事のことすらまともに教えてもらえず、ストレスや仕事のしづらさで結果的に仕事をやめた経験があるので、メンター制度の厳しい現状は身を持って理解しているつもりです。

メンターが陥るジレンマ、その対処法

前述で、私の過去のメンターがイマイチだったと書きましたが、いざ私がその後の企業でメンターを務めた事で、メンターって結構しんどいな、と肌で感じるようになりました。あの時私の教育に非協力的だった彼女も彼女で、メンター独自のジレンマに陥ってしまっていたのではないかと思うようになりました。

メンターがメンタリングにおいてジレンマを感じる瞬間は、メンティとの価値観や仕事に対する姿勢の不一致、メンター自身が自分たちの仕事や企業を理解していないことなど、さまざまな事があげられます。

あまり大きな声では言えないんですが、当時私が勤めていたのはネットのブラック企業偏差値ランキングのそこそこ上位にランクインしている企業で、毎日社員が疲弊しながら働いている状態でした。そんな中で業界未経験の新人の面倒まで見ろというのですから、若い彼女には負担が大きすぎたのでしょう。

また私もメンター業務を繰り返す中で、業務との並行に苦しみ、体調やメンタルに影響が出たこともありました。新人を教育するメンター自身が潰れてしまう。これではまるで本末転倒です。

良きメンターになるためには

では、メンティを成長させ、メンター自身も充実したメンターライフを送るにはどうすればよいのでしょうか?

著者が語るのは、他者に関心を持ち思いやりの心を持つこと。そして組織に関する知識を頭に入れておくことです。

私が今籍を置いている会社は、新人のメンター役は大体決まった数人が任命されます。メンターに共通するのは、仕事に慣れており勤務態度が良好なことはもちろん、他人や周囲の状況を観察しながらさりげなくフォローし、相手の意見や価値観にしっかり耳を傾けることができる人。私も最近はちょくちょくメンターを任されることが多くなり、改めてメンターの責任や意義を再認識している段階です。そういった理由でこの本を手に取りました。

組織によっては形骸化してしまうことも多いメンター制度。良きメンターを多く生み出すためには、メンターはもちろん、上司、ひいては企業全体が教育制度に注力し、メンター制度が活かせる環境を作ることが大切だと思います。

メンタリング入門
著者: 渡辺 三枝子
ISBN:4532110939 / 発売日:2006-01
出版社.: 日本経済新聞社

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