生きる意味が分からない時、読みたい本 | [書評]「むなしさ」を感じたときに読む本

「むなしさ」を感じたときに読む本
著者: 水島 広子
ISBN:404731658X / 発売日:2014-11-10
出版社.: KADOKAWA/角川マガジンズ

あなたが今感じているその気持ちこそが「むなしさ」なのでは?

自分は今、「むなしい」と感じているんだなと冷静に分析できる人はなかなかいないと思います。でも、あなたが今感じているモヤモヤした不快な気持ちこそが、実は「むなしさ」なのではないでしょうか。

例えば「頑張って仕事をしても認めてもらえない時」「社会にいろいろな問題があっても、結局は政治家が思い通りに決めてしまうのだと感じる時」「自分を負け組だと感じる時」「結婚どころか、恋人もいないと感じる時」「活躍している人を見た時」「社会や世界がこれからよくなっていくとは思えない時」など、さまざまな場面であなたの活力を奪うその感情こそが「むなしさ」の正体なのだ思います。

そんな「むなしさ」が、いつ頃からか社会を覆うようになったと著者は語っています。さらに、昔から思春期あたりは、こんなことを考える専売特許のような時期でしたが、最近は、その感覚が思春期のみならず、もっと多くの世代に広がっているとも指摘しているのです。

「むなしさ」の内容や理由は千差万別。

同じ「むなしさ」であっても、その内容や理由は千差万別です。そのことを踏まえたうえで、著者は「むなしさ」の種類別に、どう考えればよいか、どう対処すればいいかを具体的に、優しく、思いやりに満ちた言葉で説明してくれます。

目次を見るとそのシチュエーションが分かります。
第一章「やっても仕方がないと思うときのむなしさ」、第二章「心にぽっかりと穴が開いたようなむなしさ」、第三章「同じことの繰り返しというむなしさ」、第四章「人生の意義がわからないというむなしさ」、第五章「自分という存在に意義が感じられないむなしさ」、第六章「変化に伴うむなしさ」、第七章「衝撃によって引き起こされるむなしさ」です。

自分の「むなしさ」がどれにあたるのか、改めて考えてみた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、実際に本書を読んでみると、実は、自分の中にはどの種類の「むなしさ」も存在していると、改めて気づかされます。それほど「むなしさ」は身近な感情なのです。

「本を売る」ことではなく「読み手を救うこと」が目的である本

例えば「人生の意義がわからないというむなしさ」に関して、本書には次のようなコメントがあります。

今の生活には実は何の不自由もなく、むしろ幸せですらあるのに、「自分のしたいことを見つけなければ」「自分らしい人生を送らなければ」という強迫観念が頭を占領してしまうと、なんだか自分がむなしい毎日を過ごしているような気になってしまうのです。

特に最近は、「好きを仕事にしよう!」などという自己啓発ブームもあってか、ただ普通に生活することがまるでむなしいことのように思われる場合があります。「隙間時間」の扱いも同じです。

「隙間時間」というのは、人間を休ませ、リセットさせる良い時間だと思いますが、それすら「資格取得などに活用しないと、将来につながる利益はやって来ない」と思ってしまうのです。

ちまたにあふれる自己啓発本の中には、自分の「足りないところ探し」を強要して、逆に不安をあおるような内容のものも多いことに気づかされたのではないでしょうか。

この本は「とにかく刺激的な見出しで、読者を引き付けて、売り上げを伸ばそう」という類の本ではないため、一見地味で、特徴のない本のように思えるかもしれません。私自身も、正直なところ、この著者の他の本を読んでいなければ、購入することはおろか、手に取ることさえなかったと思います。

しかし、読んでみれば、自分が本当に知りたかったのはこういうことだったのだと、心から納得できるし、どうしてもっとこの本を売ろうとしてくれないのかと、本屋さんに文句を言いたくさえなります。(笑)出口が見つからず、自己啓発本を読めば読むほど迷路にはまり込んでいくような感覚を持っている人に、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

「むなしさ」を感じたときに読む本
著者: 水島 広子
ISBN:404731658X / 発売日:2014-11-10
出版社.: KADOKAWA/角川マガジンズ

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