性産業を社会的な役割として認めるために必要な事 | [書評]日本の風俗嬢

日本の風俗嬢
著者: 中村淳彦
ISBN:4106105810 / 発売日:2014-08-09
出版社.: 新潮社

風俗嬢と言うと、「売春」という連想から、かなりアンダーグラウンドなイメージを持たれるのではないでしょうか。このため、性ビジネスは貧困者については最後にたどり着く稼ぎの手段として、良く言えば、社会のセーフティーネットとして機能してきたとも言えます。

性ビジネスの変化

しかし近年、この性ビジネスが一変していると本書では述べられています。

ブルセラ世代と呼ばれた1980年生まれが20歳になった2000年あたりから性の売買に抵抗のない女性が急増した。その後、数年間を費やして10代~40代の多くにその意識が浸透している。この期間に女性たちは性に対してポジティブになった。「肉食女子」などという言葉が生まれたのも、そのあらわれかもしれない。

これにより、需要と供給のバランスが崩れ、性風俗が「女性なら誰でも参入できる」ビジネスではなくなり、同時に社会のセーフティーネットとしての機能も失われました。本書の中で、「何らかの理由で風俗嬢を脱せない女性」のインタビューが何件か登場しますが、一様に悲壮感が漂う内容となっています。

性ビジネスが「普通の仕事」になる日

こうしたは変化を受けて、反社会性力との関わりや非合法の行為など解決すべき問題は多々あるものの、今後は風俗嬢を「技術者」として認めるべきではないかと本書では論じられています。

性産業の社会化とは、ナイチンゲールが看護の世界で実現したことを、そのまま性風俗の世界でも実現しよう、ということです。19世紀の看護は、職業としての社会的地位は極めて低く、世間からも蔑まれて、まともな仕事は見なされていなかった。今の性風俗と同じです。

事例として、性風俗の社会化に取り組んでいる非営利団体へのインタビューを通して、性風俗をただの娯楽ではなく、「問題解決型サービス」へ消化させる取り組みを紹介しています。もちろん、風俗嬢も「技術者」としてのスキルを求められることになりますが、性ビジネスの変化の過程として、荒唐無稽な結論ではないように思えます。

テーマがテーマだけに万人受けする内容ではないとは思いますが、視点として非常に斬新な点も多く、新たなビジネスの萌芽としても興味深い内容であると感じました。

日本の風俗嬢
著者: 中村淳彦
ISBN:4106105810 / 発売日:2014-08-09
出版社.: 新潮社

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