知らなかった!ビブリア古書堂の謎 | [書評]ビブリア古書堂の事件手帖
連作で経年劣化しない珍しい作品
本書は、ベストセラーで、テレビドラマにもなった、「ビブリア古書堂の事件手帖」の第6作です。もちろんそれまでの作品も全部読んでいますが、本書が最もオススメです。とは、言ってもいきなり本書だけ読まずに、第1作から読むことを強くオススメします。でないと、主人公の五浦くんと栞子さんの関係など、何のことかわからない状態で読むことになります。
本書は、これまでのストーリーもバックボーンとして踏まえていますが、次の点において本シリーズのこれまでの作品より優れていると思いました。
・主人公の恋愛の描き方
・過去の作品とのリンクの仕方
・犯人探しと意外性
・太宰治の作中文の使い方
本書の概要
本書の裏表紙の内容紹介は次のように書かれています。
古書は長き時を超え思わぬ因縁を結ぶ
太宰治の「晩年」を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。
“中略”
本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。四十七年前にあった太宰の稀覯本を巡る盗難事件。それには二人の祖父母が関わっていた。
今回の事件の原因となるのは、この「晩年」です。初版本にまつわる数奇な出来事が、主人公二人の家族の関係と相まって展開されます。
まずは本シリーズの面白さである、名作本のトリビアから
このシリーズの面白さのポイントである、名作本の、特に初版本の、裏話がストーリーを盛り上げます。今回は、太宰治なので、誰でも一度は読んだ「走れメロス」についても語られています。「ほほう、そうだったんだ」ということを今更ながら教えてくれます。他の作品としては「駈込み訴え」と、問題の「晩年」についてです。「駈込み訴え」は、傑作らしいです。まだ読んでないので、読まねば。
本シリーズの終わりが近い
本書は、2014年12月の初版です。それ以降、続編が出ていないので、てっきり本書がシリーズ最後だと思って読んだのですが、外れました。あとがきにて著者は、
次か、その次の巻で「ビブリア」のシリーズは終わりです。
と述べています。もう少し、本シリーズが楽しめそうです。でも、次は一体いつ出版されるんだろう?