「さよなら、わたし。さよなら、たましい。もう二度と会うことはないでしょう」 | 本で出逢った感動の名言

ハーモニー〔新版〕
著者: 伊藤計劃
ISBN:4150311668 / 発売日:2014-08-08
出版社.: 早川書房

本で出逢った名言・名セリフ

「さよなら、わたし。さよなら、たましい。もう二度と会うことはないでしょう」

ハーモニー より

そのセリフに感銘を受けた理由

『ハーモニー』という素晴らしいSF作品の中で、ラストを締めくくるこの言葉は、本当にぐっとくるものがあります。作者伊藤計劃が病気の身でありながら、ここまで行きついた奇跡に対する感動もあるのですが、それ以上に心揺さぶられるものがありました。

大多数にとってのユートピアでありながら、主人公にとっては限りなくディストピア。自分に限らず、たくさんの人がどことなく世界にたいしてそんな感覚を抱いていると思います。その気持ちを抑えつけている主人公に感情移入をしていると、最後の言葉というのが絶望と希望を同時に感じることができるのです。思いやりに満ち溢れた社会を憎悪しながら、自分という魂の砦はかたくなに守ってきた主人公が、最後にあきらめる、という結末に行き着いたのは当然のことなのかもしれません。

その言葉をかみしめると、自分の中にはない作者の完成を感じることができますし、何より主人公の潔さにほれぼれしてしまいます。主人公の気持ちに行き着くために何度でも読み返したくなります。

回答者:20代 男性

ハーモニー〔新版〕
著者: 伊藤計劃
ISBN:4150311668 / 発売日:2014-08-08
出版社.: 早川書房

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