いく度も繰り返されて、言葉は少しずつ意味を失い、言葉のもたらす痛みも和らぐ。 | 本で出逢った感動の名言

悪童日記
著者: アゴタ クリストフ
ISBN:4151200029 / 発売日:2001-05
出版社.: 早川書房

本で出逢った名言・名セリフ

いく度も繰り返されて、言葉は少しずつ意味を失い、言葉のもたらす痛みも和らぐ。

悪童日記 より

そのセリフに感銘を受けた理由

『悪童日記』の中の「精神を鍛える」より。双子の少年が周囲からの言葉に動じないよう訓練をするというシーンです。最初,二人は互いに罵声を浴びせ合い,周りからの罵詈雑言に慣れることに成功します。それだけならさほど目新しくないのですが,次に二人はかつて母親から投げ掛けられた愛情の籠もった言葉についても同じことをするのです。

もうそうした言葉を掛けてくれる人はおらず,思い出を胸に秘めておくのも切な過ぎるからです。罵詈雑言だけではなく,愛情に満ちた言葉についてまでその意味を失わせなければやっていけないような少年たちの現状の過酷さに,胸が苦しくなります。

繰り返されるほどに言葉の意味は失われていくといいますが,この箇所を読んだ時の衝撃は簡単には失われないと思います。

回答者:30代 男性

悪童日記
著者: アゴタ クリストフ
ISBN:4151200029 / 発売日:2001-05
出版社.: 早川書房

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