【彼氏彼女の事情】ありのままでいたいから二人は一緒になるのだ | おすすめ漫画感想

彼氏彼女の事情
著者: 津田 雅美
ISBN:4592120655 / 発売日:1996-06
出版社.: 白泉社

高校生になったヒロイン宮沢雪乃が中学生までずっと優等生である仮面をかぶり、先生も級友も騙していた。もう一人、新入生の中で家柄も頭もよく、美男子の有馬総一郎と出逢う。敵愾心むき出しで相手に勝つ事を誓うヒロインだったが、彼は君はすごいねと言われ、勝ったという満足感が得られない。

彼女は今までの自分が人から褒められたいがために、優等生を演じてきた自分を恥じるようになる。だから、心から笑ったり、喧嘩したりできる友達が一人もいないときづく。そんな彼女は彼に君が好きだと思いを告げられるが、素直になれず相手から逃げてしまいそうになる。

でも、彼を知っていくうちに、彼も生い立ちが複雑であるが故、養父母である家族にさえ心を開けず、苦しんでいると告げられ、彼と二人で優等生を演じることをやめると決める。恋人になった後でも、有馬は幼少期に負った心の傷から雪乃に自分の苦しみを打ち明けられず、悩んでいた。彼は窮地に立たされる。彼を虐待してひどい傷を負わせた実の母親である涼子が彼に会いにきた。涼子は貪欲で残忍な女性であり、有馬を脅していいなりにさせ、彼は幼少期に味わった苦しみに襲われる。雪乃はそんな彼を支えようとするが、有馬は拒絶し、関わるなと突き放す。有馬が自暴自棄になってゆく姿を見て、雪乃は彼に自分の言葉をぶつけてゆく。

私はあなたを嫌ったりしない、あなたは私を守り続けてくれた、もう頑張らなくていい、と。彼は自分の奥底にある感情を解放し、立ち上がる。そして涼子を撃退してゆく。涼子の一件がようやく終わったあと、今度は実の父親である有馬玲司がピアニストのコンサートに出演するために日本へ帰国。初めて実の父親と会話を交わす事になる。それは子供の頃、玲司も母親が彼を巻き添えにして心中事件を起こした事、生き残った玲司は有馬の家で冷遇されたが、唯一心を開いたのは有馬総司である。彼は総一郎の養父であり、玲司とは異母兄弟であるのだ。

やがて玲司は非凡な才能を発揮し、総司の心の中には妬みが生まれ、玲司を突き放す。玲司は心を閉ざし、夜の町を出歩く青年達とであい、冷酷な涼子と関係を持ち、彼女から黙っているから養育費を要求。玲司は重傷をおった総一郎を発見、すぐに兄に連絡して助けてくれと懇願する。二人の間には亀裂が入った。総一郎は玲司に自分の気持ちを伝え、ついに総司と玲司は再び言葉を交わす事になる。一番苦しんでいた有馬総一郎が自分を愛してくれている人たちは傷のある自分であっても変わらず愛してくれる、見守ってくれる、遠く離れた実の父親である玲司も息子の総一郎が幸せになるようにと願っていた。

だからこそ、自分は彼らを大切にしたのだ、自分の心は決して悲しみで染まりきってはいないのだと気づく事で、少年という殻を破り、意志を持つ一人の男へと成長してゆく。主人公はヒロインであるはずだが、後半に出てくる有馬総一郎の悲しい過去を見て心が凍り付くような思いをしました。

私が高校生の時に全巻読破しましたが、この作家さんはここまで描けるなんてすごいと思いました。

回答者:30代 女性

彼氏彼女の事情
著者: 津田 雅美
ISBN:4592120655 / 発売日:1996-06
出版社.: 白泉社

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