煉獄に笑う~300年前の大蛇と双子をめぐる物語~ | [書評]煉獄に笑う(1)

煉獄に笑う(1)
著者: 唐々煙
ISBN:4800003075 / 発売日:2014-05-14
出版社.: マッグガーデン

300年前の大蛇をめぐる物語

『煉獄に笑う』は、前作『曇天に笑う』より300年前の物語です。

曇天に笑うが曇家三兄弟が主軸となっていたのですが、こちらは双子の当主とお使いにやってきた佐吉(のちの石田三成)が主軸です。前作と同じく、コメディー部分は思いっきり笑えて、シリアスな部分は伏線を含め読み応えがあり、戦闘シーンは大ゴマを使った躍動感ある構図です。

一旦終わってしまうようで、そこも伏線でしかないあたり、『曇天に笑う』を意識しているのではないでしょうか?

強い女の子がかっこいい

本作は、とにかく女の子たちの芯の強さが魅力的です。

「うち以外に国友を護れる者はいないみたいです」

サブキャラクターではありますが、重要なポジションにいる国友藤兵衛のセリフです。

自分を快く思わない反逆者に向けた言葉。たった一言なのに覚悟や彼女の強さが分かります。護りたい人がいるから強くなるというのはやや陳腐かもしれませんが、部下たちが自分の為に駆けつけてくれた後なので印象に残りました。

「曇に逆らうのなら命を捨てて来い」

こちらは主軸の一人、曇家八代目当主曇阿国が伊賀の忍者に向けて言った一言です。

簡潔に言うなら、勇ましいですね。女性なのにとても強い。その後の戦闘シーンでの大ゴマではほぼセリフがないのですが、とにかくかっこいいです。敵を次々となぎ倒した後、一人強気な目を向ける所が特に。

キャラクターは女性らしい容姿なのに、中身は気高いところを見せるんです。かっこいい女性の特徴の一つは気高さにあるとおもいます。プライドが高い、高飛車とはまた違う、真っ直ぐなぶれない芯。憧れを抱かせるキャラクター達です。

“煉獄”に笑うの本当の意味

なぜ、今回は”煉獄”なのか?

前作は曇り空の続く近江が舞台だったので、曇天に笑うでも違和感がなかったのですが、この”煉獄”の意味は三巻で明らかにされます。

昔、双子は祟るという迷信があり、忌み子なんて呼ばれていたからかなと思っていました。丙午の迷信と似たようなものです。近江の人々も煉獄人と呼んでいたので、本当にそういう意味だと思ってました。それが伏線でした。

「我等、八代目曇家当主。恋国に笑う者也」

双子の二人が全く違う場所でボロボロにて笑いながらという場面なので、インパクトがありました。ここでこれまでにちらほら出ていた伏線は回収。こうくるか…みたいな意外感はありました。ここで、本当の意味を知る。それでも物語はここからみたいな感じがつづきを期待させます。

つづきがとにかく気になって仕方ないです。なにやら曇天に笑うによると何かしら退治するときにトラブルがありましたし、まだこの本のキーワードである『髑髏鬼灯』もさほど全容が見えて居ません。かっこいい女の子が好き、見ごたえのあるバトルシーンが好きな方にはおすすめです。

煉獄に笑う(1)
著者: 唐々煙
ISBN:4800003075 / 発売日:2014-05-14
出版社.: マッグガーデン

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