日本映画を愛する松本人志の映画選評 | [書評]シネマ坊主3
幼い頃はダウンタウンの笑いに共感できなかったが今はそこそこ理解することができる。
そんな人は世の中にごまんといるだろう。
私が好感を持っているのはコメンテーターとしての松本人志だ。
屈折している部分はあるものの、人としては間違ってもいないし、何より不器用ながらもひとつひとつの事柄に対する真っ直ぐな物言いには愛おしさすら感じられる。
今回ご紹介するのはそんな一癖ある松本人志の映画選評だ。
続編のセオリーを覆す
なぜ本作「シネマ坊主3」にスポットを当てたのか。単刀直入に言うと、1と2は松本人志の生粋のファンでもない限りはとてもではないが進められたものではないからだ。ところがこの3に来て、主観で映画をぶった切りまくっていた若かりし頃と比べると40代も半ばに差し掛かった当時の松本にしては俯瞰で映画選評をできるまでに高い精神性が身に付いている。
ちなみに本書には当時、松本の手掛けた「大日本人」の自己評価も綴られている。
三部作で最新作が最も高評価というのはセオリーから外れてはいるが、そこには精神面での変化が大いに感じ取れる。
松本人志の映画愛
松本人志は芸能人の中でも屈指の映画好きとも目されている。多忙を極める中、今でも月に新作を5本は観ているとも言われている。
21世紀初頭、一時期はハリウッド映画の衰退に嘆いていたこともあったが、シネマ坊主3では語り口も当時に比べるとマイルドになり、映画ひとつにしても冷静な評価ができているように思う。
ただ、やはりハリウッド映画よりも日本映画を贔屓目に見ているところは依然としてあり、海外映画好きには相容れない点も多々あることと思う。
あくまでも独断と偏見ではあるが、独自の審美眼でもって突っ込みどころ満載の理不尽なシーンをせっついているのはやはり芸人の性というものか。
願わくはいつの日か、持ち前の松本イズムを残しつつも、非の打ち所のない「シネマ坊主4」の出版を心待ちにしている。