森博嗣が理詰めで語る人生相談| [書評]「やりがいのある仕事」という幻想

「やりがいのある仕事」という幻想
著者: 森博嗣
ISBN:4022735023 / 発売日:2013-05-10
出版社.: 朝日新聞出版

「やりがいのある仕事」を探していますか?

私は、長い間「やりがいのある仕事」を探していました。

そして、本書に出会いました。冒頭、いきなり著者はこう書いています。

僕は、二人の子供を育てた。(中略)どんな生活をしていようと、生きているならば、自分の子供であるから嬉しい。仕事というものは、今どんな服を着ているのか、というのと同じくらい、人間の本質ではない

まず、仕事=人生だと思っていた私はここに驚きました。仕事が人生の為に必要なのは間違いないですが、それは人生の本質ではない。

しかし、お金を稼がなければ生きていけない。そういう「仕事」についての付き合い方についての書籍です。

投げかけられる切迫した質問の数々

本書の中盤である第4章は、著者の森博嗣よりも若い方々からの仕事に対する質問に、著者が答えていくという構成になっています。

そしてその質問に、著者が非常に論理的な答えを返す。この章が、とても勉強になります。

例を挙げてみます。

Q:仕事に希望がありません。

A:人生の生きがいを仕事の中に見つける必要はどこにもない。(中略)
仕事をしている(お金を得ている)から、自分の好きなことができる。
仕事の基本は対価との「交換」にある

根も葉もない答えに見えるかもしれませんが、この本質を理解しておかないと
「仕事は楽しくなくてはいけない!」
という幻想にいつまでもしがみつき、苦しむことになると著者は言っています。

Q:休日に心が休まりません

A:仕事の心配事に支配されるのは、責任感が強い証拠で、きっとあなたは職場で信頼されているのだろう。(中略)
多少は忘れた方が良い。忘れるために必要なことは、休んで「やらない」時間を作るのではなく、もっと楽しいことを探してそれを「やる」時間を持つ以外にないだろう

確かに、「なにもしない」というのは案外疲れるものですよね。

「やりがいのある仕事」を探している人も仕事に対して真摯な人が多いので、こういった著者の言葉が響くのではないかと思います。

論理的な答えに触れることで思考が明確化する

著者の森博嗣は、工学博士で、ミステリ作家です。その論理的思考から紡がれる小説は今もなお多くの人に愛されています。そして、本書のようなエッセイ本も、実に明確で論理的な文章で紡がれています。

あなたが「やりがいの仕事ってなんだろう?」という答えの出ない悩みに悩まされているのならば、本書を読むべきだと思います。

著者の論理的回答を読み進めることで、読者のあなた自信の思考も整理され、そして自分なりの「答え」が必ず見つかるはずです。

「やりがいのある仕事」という幻想
著者: 森博嗣
ISBN:4022735023 / 発売日:2013-05-10
出版社.: 朝日新聞出版

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