“大人”になった瞬間を覚えていますか? | [書評]おとなになるってどんなこと?
「おとな」ってなんだろう?
皆さんは大人になった瞬間を覚えていますか?
子供の頃は、「20歳になったら大人なのかなぁ?」なんて考えていて、20歳になったら「働き始めたら大人なのかな?」なんて考えていて、働き始めたら「30歳くらいになったら少しは落ち着いて大人っぽくなるかな」なんて考えて、自分はまだ大人になっていないんじゃないかと、そう思っている人も多いのではないでしょうか。
または、「大人ってこんな感じだったのか」という風に考えている。
本書は著者の吉本ばななが子供に向かって語りかけるような内容になっているのですが、大人が読んでも数々の気付きがある本です。
おとなになる瞬間とは
おとなになった瞬間が「あそこだ!」と言える人は少ないのではないのでしょうか。
そして「おとなとはこういうこと」と説明できる人も少ないのではないでしょうか。
著者はこう書いています。
私が初めて大人になったと思えた瞬間を、私ははっきりと覚えています。
それは情けないことにそうとう遅く、中学生のときでした。
著者は中学生の頃、病気がちで、その都度、父親やおばあちゃんが付き添いをしてくれていました。そして、ある時気がつくのです。
このついてきてくれたふたりにとっても、今日は自分のしたいことができる一日だった。
それまで、自分の病気の事を呪うばかりだった著者が、自分以外人の事を考え、そしてきちんとお礼を言う事ができた。その瞬間を著者は「大人になった瞬間だ」と言っています。
自分は大人なのか? 周りに大人はいるのか?
大人が「自分以外のことを考えられる人間」だとしたら、自分の周りにはどれだけ大人がいるのでしょう。そして、自分自身はどうなのだろう。
そんな事を考えられる本です。
本の中では他にも
・普通ってどういうこと?
・死んだらどうなるんだろう?
・生きることに意味があるの?
そんな、子供でも大人でも答えが出せないような疑問に、著者が真摯な考えを述べています。
優しい装飾と、優しい文章。そして真摯な答え。
子供向けの本ではなく、この本は「おとな」と言われる年齢の方々にこそ読んでもらいたい、そう思っています。