この作品は、短編集の中の表題作です。映画業界で働く男の恋愛がテーマの作品です。主人公・小林と元同僚・石原は私と同年代くらいの都会のエリートなので、映画製作のことはてんで解りませんがそれでも感情移入できました。

作中に出てくる映画のコンセプトに【自己犠牲】が使われていますが、それは二人の関係性にも見て取れます。私自身の性格上【自己犠牲】しがちですが、それは深層心理で美しいと思っているからかもしれない、と考えされられました。

私が選んだ石原のセリフは、された側からのセリフです。作中で二人とも自分が最善だと考える、相手の幸せのために自分を犠牲にしています。世の中では【自己犠牲】は美しいと好まれることが多いですが、実際の当事者の立場から見ればきれいごとで片づけられないこともあります。

しかし、【自己犠牲】なくしては狭いコミュニティほど生きるのが困難です。このセリフは、自分の過去の体験談にも当てはまる部分があり、共感できるので好きです。

回答者：30代 女性

本で出逢った名言・名セリフ

…自己犠牲ってのは美しくも何ともないな

泡にもなれない恋ならば より