理系大学生の日常と非日常 | [書評]キケン

キケン
著者: 有川 浩
ISBN:4101276323 / 発売日:2013-06-26
出版社.: 新潮社

キケンサークル

この物語は成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」通称「キケン」で起こる様々な出来事の記録です。部長の上野直也、副部長の大神宏明、親友部員の元山高彦と池谷悟が中心となり様々なイベントや日常を描いています。

日常すらもイベントにしてしまう一人一人個性的でヤンチャな若者たちの掛け合いが思わず口元が緩んでしまいます。文化祭やロボット大会などのよくあるイベント、色恋沙汰や若い頃の変な意地っぱりエピソードなど、学生時代を思い出しながら、そしてうらやましく思いながら読み進んでしまいます。

キャラそれぞれが個性的で印象的

「勝てんでも負けん。です。」

これはロボット大会での意気込みを述べた時のセリフです。

これだけを聞くと本当に意気込みだけは絶対に負けない的な、楽しめれば負けない的な、そんな精神的なような印象を持ちます。しかし、彼らは予想外の戦術で戦い、本当に負けませんでした。部長上野のキャラクターを強烈に印象付けたエピソードです。

また、文化祭のエピソードでは元山がお店の子として屋台ラーメンのレシピづくりに大活躍します。その活躍が後々のエピソードに絡んでくるのですが、サークルの伝説を打ち立てたというエピソードに昇華していて読み終えた後の達成感は中々のものです。疾走感とスリルも感じる様な描写もあり、簡単に読み進めてしまいます。

ちょっとした日常ミステリー要素

実はこの作品は回想の手法を用いて進めていきます。部員が数年後に嫁に思い出話を話す構図になっています。よくある手法ですが、それなりに伏線と流れを作っているのでほのぼのとした謎が解けていく様が小気味よいです。

また、ありがちなお涙頂戴の流れを組んでいますがやはりお涙でした。期待を裏切らない流れで期待通りの流れ。一定の感動を得ることができます。

いわゆるオタク系サークルでのあまり関わらないようなキャラたちの生活を窺い知ることができるとともにいつの間にか引き込まれて感情移入してあたかも自分がそのサークルの一員になってしまう感覚を持ち、一緒に青春を楽しめる物語です。

キケン
著者: 有川 浩
ISBN:4101276323 / 発売日:2013-06-26
出版社.: 新潮社

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