少女マンガの革命の時代 | [書評]少年の名はジルベール

少年の名はジルベール
著者: 竹宮 惠子
ISBN:4093884358 / 発売日:2016-01-27
出版社.: 小学館

大泉サロン

1970年、20歳だった竹宮恵子と萩尾望都が上京し、大泉で共同生活を始めました。

近くに住んでいた増山法恵さんと交流し、そこは大泉サロンと呼ばれ、多くの少女マンガ家の卵や少女マンガ家が出入りして、少女マンガのニューウェーブを作っていきます。若者たちが本気で革命を信じていた時代、竹宮恵子さんたちは、少女マンガの世界を改革しようという明確な意志を持って描いていたのだということが本を読んでいると分かります。

当時リアルタイムで彼女たちのマンガ作品を読んでいた私としては、何故こんなにも迫力があり、哲学のあるマンガが出てきたのか、よく分からないままに、夢中で彼女たちのマンガに入り込んでいました。

少女マンガを変える

「男の子と男の子の微妙な友情って、いったい何なんだよ。ボツだ!ボツ!」

竹宮恵子さんは当初から少年愛のマンガを構想していましたが、編集部に原稿を持って行っても、ボツにされてばかりだったのだそうです。少年愛を描くことは当時の少女マンガ界にとってはタブーでした。それも、性愛(エロス)の部分にまで踏み込んだ描写というのは、受け入れられないものでした。

名作「風と木の詩」が世に出るまでに、なんと7年の歳月がかかったのだそうです。大泉サロンにおいては、竹宮さんは天才・萩尾望都さんと一緒にいることにプレッシャーを覚え、やがて彼女と一緒にいることが辛くなって、とうとう同居を解消し、大泉サロンは解散します。大泉サロンが続いたのは2年ちょっとぐらいのことだったのだそうです。

竹宮さんは萩尾さんの才能に打ちのめされたということですが、竹宮さんだってものすごい才能の持ち主でした。やがて彼女の作品は受け入れられて、「風と木の詩」も大ヒットします。竹宮さんと萩尾さんの共通の友人だった増山さんは、自分ではマンガを描かなかったのですが、彼女たちに多くのインスピレーションを与えて、プロデューサーのような役割を果たした重要人物です。

大きな才能が集まって、影響しあい、漫画界に革命を起こしていった経過がよく分かって、ワクワクさせられる本でした。

少年の名はジルベール
著者: 竹宮 惠子
ISBN:4093884358 / 発売日:2016-01-27
出版社.: 小学館

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